「公認を得ることができました」。16日朝、自民党前職の北村誠吾(74)は佐世保市中心部の国道沿いでにこやかに手を振った。帯同した県議や市議は「ようやく胸を張れる」と安堵(あんど)感をにじませた。
地方創生担当相時代の失言などに対し、選挙区内から不満が噴出。複数の支部や団体から推薦を受けた前県議会議長の瀬川光之と争う事態となり、県連は瀬川を党本部に公認申請した。
8選に向け巻き返しを図る北村は「次代に継ぐ」というキャッチフレーズを打ち出し、ポスターにも記した。ある自民関係者は、世代交代を望む若手中堅の県市議がこれを「あと1期だけ」という手形と受け取り、彼らの「やる気に火を付けた」とみる。今月に入り、街頭活動で北村に加勢する人数は明らかに増えた。
公認争いは衆院解散翌日の15日までもつれたが、党本部の裁定で決着した。だが「組織を二分した溝は深いまま。簡単に挙党態勢は築けない」との見方は少なくない。
しかも党内の不満に呼応し、元佐世保支部幹事長で北村を支えた前佐世保市議の萩原活(ひろし)(61)が11日、突如出馬の意向を明らかにした。「公認争いは党への不信感を招いた。北村氏は退くべきだ」と訴えて離党。保守層の“反北村票”の獲得に意欲を見せる。
立憲民主党新人の末次精一(58)は1日、同市中心部で「政権交代に向け大きな一歩を踏み出したい」と訴えた。隣には社民党党首の福島瑞穂。末次は演説後、笑顔で「次は玉木(雄一郎)さんに」と国民民主党代表にも秋波を送った。
長崎4区は共産党が擁立を見送っており、「野党共闘が実現する」と自信をのぞかせる。
ただ、足元は万全とは言えない。末次がこれまで在籍した自由党や生活の党などは県内基盤が弱く、「末次は本格的な党営選挙には慣れていない」と陣営関係者。7月には、立憲民主党県連から、連携不足や選対立ち上げの遅れを不安視され、候補者差し替えの話まで持ち上がった。
選挙態勢は8月に固まったものの、末次の後援会と支援労組は別々に活動し、定期的に合同選対会議を開く形にした。過去の衆院選で非自民候補の選対には、集票力のある佐世保重工業(SSK)などの労組が入り込んでいた。それだけに、北村陣営ほどではないにせよ「今回は一体感に欠ける」と声が漏れ聞こえる。
このほか元神戸大助手の田中隆治(78)も出馬予定。2019年佐世保市長選では、現職との一騎打ちで落選したが、約2割の得票率で批判票を一定集めた。
それぞれの思惑や事情が絡み合いながら19日、選挙戦の本番に突入する。
=敬称略=
2021衆院選ながさき 長崎4区 組織一丸になれるか
2021/10/17 [10:30] 公開