昨年の今頃は、元旦に起きた能登半島地震に驚き、国中がその被害のニュースに心を痛めていた。さらに9月には豪雨災害が能登に追い打ちをかけた。被災地は苦境が続いている。今もご苦労されている方々に気持ちを寄せたい。
わが国はたびたび大きな災害に見舞われてきた。1982年の長崎大水害、95年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、16年の熊本地震、18年の西日本豪雨と台風19号…。枚挙に暇がない。
地理的、国土の構成からいえば、この先も大きな災害は繰り返すだろうし、地球環境の変化も災害を激甚化するといわれ、近年では「百年に一度」や「想定外」の極端気象が毎年のように襲う。火山の噴火や南海トラフ地震なども心配だ。災害に強い国土をつくることは、わが国の政治が何を置いても取り組むべき最優先事項であろう。
国はこれまでも災害の緊急支援を行いつつ、通常の公共事業といわれる道路、橋梁、河川、防波堤や港、傾斜地整備に加え、防災・減災、国土強靭化(きょうじんか)の予算を上乗せしてきたが、その規模は決して十分とは言い難い。緊急性や当面の必要性の議論に加え、何よりも硬直化した国家予算の省庁配分がその実現を阻んでいるのだ。国の予算配分は当然ながら都道府県や市町村にも反映される。
必要な予算規模が適正かを判断するのは難しい。そこで、風水害や地震の少ない他国の予算規模と比較してみた。災害関連を含めたインフラ投資の全容を国際比較でみると不思議なことがわかる。手元の資料では20年前から英国は3倍、韓国2倍、米国1・8倍、ドイツ1・4倍に増えているのに対し、日本は逆に0・7倍と減っているのだ。なぜだろうか。
諸外国は、災害対策だけでなく経済成長を支えるなどの視点から計画的にインフラ投資を実施してきた。その結果、GDP(国内総生産、国の経済力の目安)は1・75倍から2・6倍に伸び、一方、日本だけが1・06とほぼ横ばい成長に留まっている。
諸外国ではインフラ整備は消費ではなく投資とされ、その投資が成長を促したといえる。インフラ投資が経済の成長を支え、さらに経済の成長によって生まれる財政の自由度がインフラ投資の増額を支える-という好循環も見てとれる。
防災力の強化には、被害規模を抑え、人の命を守る切実な意味があることを胸に刻んでおきたい。備えを怠ってはならない。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」を繰り返してはいまいか、と問い続ける視点を持ちたい。
【略歴】たにむら・りゅうぞう 1949年長崎市出身。星野組取締役相談役。2005年から県建設業協会長を17年間務め、現在は同会相談役。建設業労働災害防止協会県支部顧問なども務める。武蔵野美術大学造形学部卒。
わが国はたびたび大きな災害に見舞われてきた。1982年の長崎大水害、95年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、16年の熊本地震、18年の西日本豪雨と台風19号…。枚挙に暇がない。
地理的、国土の構成からいえば、この先も大きな災害は繰り返すだろうし、地球環境の変化も災害を激甚化するといわれ、近年では「百年に一度」や「想定外」の極端気象が毎年のように襲う。火山の噴火や南海トラフ地震なども心配だ。災害に強い国土をつくることは、わが国の政治が何を置いても取り組むべき最優先事項であろう。
国はこれまでも災害の緊急支援を行いつつ、通常の公共事業といわれる道路、橋梁、河川、防波堤や港、傾斜地整備に加え、防災・減災、国土強靭化(きょうじんか)の予算を上乗せしてきたが、その規模は決して十分とは言い難い。緊急性や当面の必要性の議論に加え、何よりも硬直化した国家予算の省庁配分がその実現を阻んでいるのだ。国の予算配分は当然ながら都道府県や市町村にも反映される。
必要な予算規模が適正かを判断するのは難しい。そこで、風水害や地震の少ない他国の予算規模と比較してみた。災害関連を含めたインフラ投資の全容を国際比較でみると不思議なことがわかる。手元の資料では20年前から英国は3倍、韓国2倍、米国1・8倍、ドイツ1・4倍に増えているのに対し、日本は逆に0・7倍と減っているのだ。なぜだろうか。
諸外国は、災害対策だけでなく経済成長を支えるなどの視点から計画的にインフラ投資を実施してきた。その結果、GDP(国内総生産、国の経済力の目安)は1・75倍から2・6倍に伸び、一方、日本だけが1・06とほぼ横ばい成長に留まっている。
諸外国ではインフラ整備は消費ではなく投資とされ、その投資が成長を促したといえる。インフラ投資が経済の成長を支え、さらに経済の成長によって生まれる財政の自由度がインフラ投資の増額を支える-という好循環も見てとれる。
防災力の強化には、被害規模を抑え、人の命を守る切実な意味があることを胸に刻んでおきたい。備えを怠ってはならない。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」を繰り返してはいまいか、と問い続ける視点を持ちたい。
【略歴】たにむら・りゅうぞう 1949年長崎市出身。星野組取締役相談役。2005年から県建設業協会長を17年間務め、現在は同会相談役。建設業労働災害防止協会県支部顧問なども務める。武蔵野美術大学造形学部卒。