人工知能(AI)などを活用した農業支援技術のコンサルティング業「日本アグテック合同会社」(長崎市、代表社員=末松謙一・末松電子製作所社長)は、モノのインターネット(IoT)を活用して、イノシシなどの害獣対策に使う電気柵の異常を農地所有者に知らせるシステムを開発した。電気柵の維持、管理をする農地所有者の負担軽減につながる。今後、量産化し、来年春からの販売を予定している。
電気柵はイノシシなどの害獣侵入を防ぐため、畑の周囲に設置される。倒木や伸びた草が電気柵に触れると、電圧が低下して害獣が侵入。農作物を食い荒らす被害が起きる。農地所有者は電圧低下をすぐに把握できないため、定期的な草刈りや見回りを余儀なくされている。
2019年、同システムの実用化に向け、電気柵メーカーの末松電子製作所が加盟する一般社団法人サイバースマートシティ創造協議会(MCSCC)が、IoTを活用した電気柵の実証実験を島根県益田市で実施した。
実証実験では、電圧の変化を検知する子機を電気柵に取り付け、無線で異常を知らせる親機を電気柵近くに設置。親機からインターネットを経由し、農地所有者のスマートフォンやタブレットに通知される仕組み。電圧が低下した位置を特定できるため、草刈りなどの効率化や電気柵の適正管理などの成果を確認できた。
実証実験を基にした同システムの事業化を目指し、MCSCC会員の末松電子製作所や東京のIT企業が出資して日本アグテック合同会社を今年8月、長崎市に設立。電気柵に関わるデータ収集を担当するほか、同システムの販売を担う。価格は親機と子機のセットで約10万円の見込み。インターネットなどを活用し、遠隔操作で電気柵の電圧低下を知らせる同様のシステムは、国内で実用化している企業もある。
末松代表社員は「今後は一つの親機から気象や害獣用の箱わなの作動確認なども検知できるようにしたい」と話した。
農地害獣対策のシステム開発 IoTで電気柵の異常を通知 管理の負担軽減
2021/10/09 [12:00] 公開