使命感と安心

長崎新聞 2025/04/20 [12:24] 公開

救急の専門医師や看護師を志す人たちには「患者さんの命を救いたい」という強い使命感のようなものがきっとあるのだと思う。でも時には使命感だけでは乗り越えられない場面に遭遇するのかもしれない▲壱岐沖で民間の医療搬送用ヘリコプターが着水、転覆し、搭乗していた医師や患者ら3人が亡くなった事故。県のドクターヘリに乗って離島から本土の病院への救急搬送を担ってきた医師や看護師らを不安にさせたのは想像に難くない。しかも県のヘリは事故機と同型だ▲国や海上保安庁が事故原因を調査しているが、いまだ明らかになっていない。このままでは県のヘリも「安全」と判断できる材料に乏しく、医師らも安心して搭乗できないだろう▲事故後、安全点検のため一時運航を休止した県のヘリは当初11日に再開予定だったが、16日以降に延期になった後、再延期となった。方針が二転三転したところに現場の戸惑いや苦悩がにじむ▲要請があれば短時間で患者の元へ飛んでいくドクターヘリが救命率向上に果たしている役割は大きい。離島の住民にとって頼もしい存在だ▲今後も離島からの救急搬送体制が不可欠であることは疑いないが、ヘリ搭乗者の安心も欠かせない。それが口で言うほど容易ではないことも、今さらながら気づかされる。(堂)