79回目「長崎原爆の日」 軍拡より対話努力を 高まる核脅威に危機感

2024/08/10 [09:42] 公開

長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典=長崎市、平和公園

長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典=長崎市、平和公園

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被爆地長崎は9日、79回目の「原爆の日」を迎え、長崎市松山町の平和公園で「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が営まれた。核保有国が当事国となる軍事侵攻や戦闘行為が深刻化する中、鈴木史朗市長は長崎平和宣言で、核兵器不使用という人道上の規範が揺らいでいる現状に危機感を表明。各国に「軍拡や威嚇を選ぶのではなく、対話と外交努力により平和的解決の道を探る」よう訴えた。

 冒頭に長崎の被爆詩人、故福田須磨子さんの作品「原爆を作る人々に」の一部を引用。生涯続く核被害を伝え、核保有国や日本を含めた「核の傘」に頼る国に対し「核兵器の存在が人類の脅威を一段と高めている現実を直視し、廃絶に向けて大きくかじを切るべきだ」と迫った。被爆体験者の救済や、核兵器禁止条約の署名・批准を求めた。
 昨年の式典は台風の影響で屋内開催となり、参列者を市関係者に限った。2年ぶりに参列した岸田文雄首相は、被爆の実相を世界に伝えることが核軍縮の「原点」だとし「被爆者の協力を得て実相への理解を促す努力を続ける」と述べた。
 被爆者を代表し「平和への誓い」を読み上げた三瀬清一朗さん(89)は、ウクライナやパレスチナ自治区ガザで多くの子どもが命を落とす中、「悲しい現実を目の当たりにして戦争の愚かさから目をそらすことはできない」と強調。英語で「平和は人類共有の世界遺産である」と訴えた。
 市によると、遺族や被爆者、過去最多となる100カ国の駐日大使らが参列。市はウクライナを侵攻するロシアと同盟国ベラルーシ、ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルについて、式典運営に支障をきたす「不測の事態」の懸念があるとして招かなかった。イスラエル不招待に反発した米英仏など一部の国は大使級の参列を取りやめ、格下の公使らが参列した。
 7月末までの1年間に死亡した被爆者と被爆体験者計3200人の原爆死没者名簿3冊を奉安。累計奉安者数は19万8785人分となる。被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者は3月末で10万6825人、平均年齢は85・58歳。