長崎モデルのアニメ「きみの色」 山田尚子監督と若手キャスト3人の思い

2024/08/12 [11:00] 公開

長崎がモデルの映画「きみの色」のキャンペーンのため来崎した(左から)山田尚子監督、キャストの髙石あかり、鈴川紗由、木戸大聖=長崎新聞社

長崎がモデルの映画「きみの色」のキャンペーンのため来崎した(左から)山田尚子監督、キャストの髙石あかり、鈴川紗由、木戸大聖=長崎新聞社

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長崎をモデル地にした新作長編アニメ映画「きみの色」が完成した。「音楽×青春」をテーマに、“人が色で見える”高校生トツ子らの繊細な気持ちに寄り添う作品。30日の全国公開を前に、山田尚子監督と、声の出演として約1600人オーディションで選ばれたトツ子役の鈴川紗由、きみ役の髙石あかり、ルイ役の木戸大聖の若手キャスト3人に作品に込めた思いを聞いた。

 -なぜ長崎をモデルに?
 山田 トツ子らがカトリックの学校に通う設定で、真っ先に頭に浮かんだのが長崎。ロケハンで長崎を訪れ、美しい景色や人柄の温かさ、人と人との距離感も心地良く、長崎には描きたいものが全部詰まっていると思った。

 -教会、シスター、聖書の教えなど作品には厳かな雰囲気が漂っているが、気を付けたことは。
 山田 長崎には信者でなくても無意識に刷り込まれている教え、信仰、相手を思いやる気持ちがあると感じた。無意識に根付いているものを描くことを大切にした。

 -場面場面が美しい水彩画のようだ。こだわったところは。
 山田 長崎はいつも晴れていて柔らかい印象、行く場所によって変わる海の色などに感動した。この風景を絵に落としこみたいと思い「光を描いていきましょう」とスタッフに伝え、トツ子が見て幸せになれる色を大切にした。たくさんの色を使って表現する印象派の絵を描くようなイメージもあった。

 -作品の中にネガティブな感情が描かれていないようだが。
 山田 皆さん心の中に悩みを抱えている。だから映画を見ている間はストレスから解放され、リラックスして見ていただきたいという気持ちがある。描きたかったのは言葉にならない気持ち。言葉にしてしまうと意味が強くなりすぎることもある。削れてしまったニュアンスをちゃんと拾い、感じるような作品を目指した。

 -トツ子らのバンドが演奏する劇中歌の一つ「水金地火木土天アーメン」が既にネットで人気だが、そのコンセプトとは。
 山田 トツ子にとって、ずっと憧れてきたきみちゃんは太陽。トツ子の好きが宇宙を凌駕(りょうが)するような曲。好きなことを好きと言える強さを描いた。

 -トツ子とはどんな人。
 鈴川 トツ子は人の色が見える女の子。すごく明るくて空気をがらっと変えるようなエネルギッシュな力を持っている。私も好きなことを日常生活で貫いているので、トツ子と似ているなと思う。

 -きみは。
 髙石 他人から思われる自分と、自分が思う自分が少し違っていて、そういうギャップに悩みを抱えて学校から逃げてしまう。なぜ取り繕ってしまうんだろうと思ってしまう、少し前の自分に似ている。きみは、悩みを打ち明けられる仲間と出会った。とてもすてきなことだなと思う。

 -ルイは。
 木戸 島で育ったもの静かな少年。音楽が大好きで2人と出会ってそれが爆発する。好きな音楽に没頭する所が、芝居が大好きな自分と重なる。子どもの頃、祖父母が住む佐世保で夏休みを過ごした。五島は訪れたことがないので、早く行ってみたい。

◎作品紹介
 「映画 けいおん!」「映画 聲の形」などで知られる山田監督の完全オリジナル作品。
 主人公のトツ子は長崎市内の全寮制ミッションスクールに通う女子高生。同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女きみと、街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年ルイとバンドを組むことに。それぞれ悩みを抱えていた3人だが、離島の古教会で練習を重ねる中で次第に心を通わせ、学園祭で初ライブを迎える―。
 脚本は吉田玲子、音楽は牛尾憲輔、主題歌はMr.Children。シスター役を新垣結衣が務めるなどキャストも豪華な顔触れ。配給は東宝。