ヘラで盛り付けられたアイスにかぶりつくと、素朴な甘さと冷たさが口いっぱいに広がる。長崎名物「チリンチリンアイス」。眼鏡橋や平和公園といった長崎らしい風景に溶け込み、祭りや運動会でよく見かけた屋台は今、ほとんど目にすることができない。
新型コロナウイルスの感染拡大で観光客とイベントが激減。コロナ前は売り上げの大半を占めた屋台販売の収益が、前年比10%台まで落ち込んだ。屋台の出店はほとんどなくなった。
一方、市民からは「屋台はどこ」という問い合わせが続いた。稲佐山まで探しに行ったという人や、事務所を訪ねる人も現れた。「黙ってコロナが落ち着くのを待つことはできない」。同市田中町の事務所に創業以来初めて直売所を開設し、サンデーなど新商品の販売を開始。味のバリエーションも豊富にした。
祖父母が創業して約60年。伝統の味を守ってこられたのは「一生懸命売ってきた“おばちゃん”たちのおかげ」。世代を超えて愛されてきた味を、今更なくすわけにはいかない。
悩まない日はないが「負けずに頑張っています」。そう、爽やかな笑顔で語った。