長崎市出身の英国人ノーベル文学賞作家、カズオ・イシグロ氏の小説「遠い山なみの光」が日英合作で映画化、今夏全国公開される。監督・脚本・編集は石川慶氏。戦後の被爆地長崎を舞台としており、今年は被爆80年に当たることから、長崎新聞社はイシグロ氏にメールでインタビューをした。返信では昨年の日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞への思いをつづったほか、古里長崎に関して「歴史の悲しみを背負いながらも、その先へと進む力を持つ街-それが、私が心に抱き続ける長崎の姿です」と記している。
イシグロ氏は被団協の受賞について、▽核戦争が過去も今日も脅威であるという警告▽平和のために憎しみや復讐心を捨て去ることの重要性-の二つのメッセージを発信したと指摘。平和賞決定は「受賞者に名誉をもたらすだけではなく、ノーベル賞そのものにも名誉をもたらすものだ」と高く評価している。
長崎への思いも深い。英国では長崎と聞くと多くが「原爆」そして「死んでしまった街」を想像するようだが、「私にとっての長崎は、むしろ『希望』に満ちた場所でした」。長崎で暮らした1950年代の幼い頃の記憶。そこには建物などが次々に造られる風景とともに豊かな自然が印象深く刻まれている。「山と海が一つの場所で出合う、そのような景色を目にできる街は珍しいのではないでしょうか。広がる青空と陽の光、波間にきらめく光、そして緑豊かな山々」-。そんな情景と人々の生きる姿から「新しい世代の人たちの未来へ向かおうとする力が感じられる場所でした」と振り返った。
インタビューは『遠い山なみの光』製作委員会を通じ実施した。
◎カズオ・イシグロ氏
1954年、長崎市で日本人の両親の間に生まれた。海洋学者だった父の仕事の関係で5歳のころ渡英。英語で執筆し、テーマは価値観の変化、記憶の不確かさ、科学技術と人間との関係など幅広い。「日の名残り」でブッカー賞。2017年にノーベル文学賞。
イシグロ氏は被団協の受賞について、▽核戦争が過去も今日も脅威であるという警告▽平和のために憎しみや復讐心を捨て去ることの重要性-の二つのメッセージを発信したと指摘。平和賞決定は「受賞者に名誉をもたらすだけではなく、ノーベル賞そのものにも名誉をもたらすものだ」と高く評価している。
長崎への思いも深い。英国では長崎と聞くと多くが「原爆」そして「死んでしまった街」を想像するようだが、「私にとっての長崎は、むしろ『希望』に満ちた場所でした」。長崎で暮らした1950年代の幼い頃の記憶。そこには建物などが次々に造られる風景とともに豊かな自然が印象深く刻まれている。「山と海が一つの場所で出合う、そのような景色を目にできる街は珍しいのではないでしょうか。広がる青空と陽の光、波間にきらめく光、そして緑豊かな山々」-。そんな情景と人々の生きる姿から「新しい世代の人たちの未来へ向かおうとする力が感じられる場所でした」と振り返った。
インタビューは『遠い山なみの光』製作委員会を通じ実施した。
◎カズオ・イシグロ氏
1954年、長崎市で日本人の両親の間に生まれた。海洋学者だった父の仕事の関係で5歳のころ渡英。英語で執筆し、テーマは価値観の変化、記憶の不確かさ、科学技術と人間との関係など幅広い。「日の名残り」でブッカー賞。2017年にノーベル文学賞。