〈他山の石以(もっ)て玉を攻(おさ)むべし〉-中国の古典が出典の「他山の石」は意味を誤解されがちな慣用句の代表格として知られる。本来の意味は〈他人の失敗や愚行も自らを磨く助けになる〉▲「人のふり見てわがふり直せ」とほぼ同じ-と覚えると分かりやすいが、文化庁の「国語に関する世論調査」(2004年度)によると、意味を正しく理解していたのは4人に1人だった▲調査では、他人の優れた言動を手本にする場合にも使える-という誤解の広がりが明らかになった。これとは別に〈A社の失敗を他山の石とせず、わが社も襟を正して…〉という「対岸の火事」との混同バージョンもおなじみ▲自民党の二階俊博幹事長の誤用はまたまた別のパターンだ。党の元議員による巨額買収事件を「他山の石」と表現して「よその山ではなく、紛れもなく自分の山だ」と批判された▲発言が再燃したのは月曜日。衆参3選挙の敗北を受け「今も他の山と考えているか」と問われて「それぐらいの表現は許されるべき」と反論した。ひょっとして「他山の石」=「負の教訓」のような新手の誤解が言わせた発言だったか▲言葉への理解が生煮えだったのなら嘆かわしいし、誤りは率直な態度で認めたい。あれやこれやまとめて他山の石としたい。使い方、合っているかな。(智)
他山の石
長崎新聞 2021/04/29 [10:52] 公開