暴力的な取り立てをしないソフトヤミ金「メビウス」を運営するグループについて、県警は無登録で違法な高金利の融資を繰り返したとして摘発した。これまでの捜査で、インターネットを駆使して集客し、借りやすいイメージで融資した揚げ句、返せなくなった顧客を続々と犯罪に加担させていた構図が浮かび上がる。その数は少なくとも400人以上。ヤミ金業者の姿は影を潜め、集客の場はネットに移っている。
県警は出資法違反(超高金利受領)などの疑いで、首謀者ら5人を逮捕(一部に有罪判決)、13人を書類送検した。県警生活環境課によると、犯行グループは福岡市を拠点とし2016年8月~19年12月、全国延べ約2万人に約9億円を貸し付け約5億円の不当な利益を得たという。
摘発された18人のうち9人はもともと顧客だった。犯行グループに銀行口座を提供したとして、犯罪収益移転防止法違反などの疑いで書類送検された。
ただ、これは氷山の一角。返済が滞った顧客は「返せなければ口座を売れ」と迫られた。県警は犯行に使用された口座のキャッシュカード約450枚を押収。これらはほとんどが買い取った口座で、少なくとも400人以上の顧客が犯罪に加担したとみている。数多くの口座を悪用し、仮に凍結されても買い取った別の口座を使って、犯行を発覚しにくくしていた。
犯行グループはインターネットで集客し、10万円未満の少額融資を中心としていた。連絡手段はLINE(ライン)かメール。返済が滞ると、暴力的な取り立てをするのではなく、ペナルティーを科した上でさらに融資し、顧客をつなぎとめていた。
激しい取り立てで追い込まれ、自殺者が出るなど多重債務は社会問題となり、06年に貸金業法が改正された。上限金利が引き下げられ、融資は原則、借り手の年収の3分の1にまで制限する「総量規制」も導入された。無登録のヤミ金業者への罰則も強化。こうした背景から、ヤミ金業者は暴力的な取り立てを控え、ネット上に犯行の場を移した。
「金利は違法ですが、最後の融資先としてがんばっております」
メビウスのホームページには、開き直ったような書き込みが残されている。顧客の中には総量規制などによって他から融資を断られた人もいて、被害感情が薄いケースもあった。
捜査関係者は「グループは『必要悪』として、犯行を正当化していた。犯罪組織を助長していたのは、お金を借りていた人たちということになる」と語る。