ソフトヤミ金「メビウス」による一連の事件で、被害者の20代男性=長崎市=が、長崎新聞の取材に応じた。メガバンクは十数万円、地銀なら数万円などと銀行口座の「買い取り表」が提示されていたと証言。返済遅れや連絡漏れには加算金や罰金が科せられ、取り立てには「個人情報をばらまく」と脅し文句が使われたと実態を明かした。
「メビウスです。融資可能ですので、いつでも連絡ください」。月初め、男性のスマートフォンには決まって、営業のLINE(ライン)メッセージが届いた。ソフトヤミ金「メビウス」からだった。
「口座の買い取りも行っています」
こうも記されていた。ゆうちょ銀行やメガバンクは十数万円、地銀なら数万円。「買い取り表」には生々しい数字が並んだ。「お金になるのか」。男性はそう思ったが、調べてみると、口座の譲渡は犯罪と分かり、応じなかった。返済時に指定される振込口座が毎回違うことから「売買された口座が利用されていると、うすうす気付いていた」と振り返る。
男性がメビウスを知ったのは3年ほど前。パチスロなどのギャンブルにのめり込み、借金が膨らんだ。複数の消費者金融から計約100万円を借り、返済に追われた。既に借りているところからは追加の融資を断られ、日々の生活費にも困っていた。
どうしようもなくなり、インターネットでヤミ金業者を探した。手当たり次第に申し込んだが、いくつかには断られた。そんな中、メビウスを見つけた。氏名や生年月日などの個人情報をLINEで送ると、あっさり「審査」に通った。
最初に電話で男から利用方法などの説明があっただけで、対面でのやりとりはない。融資の申し込みや返済の手続きはLINEで完結した。最初の借り入れは2万円ほど。毎月3万~5万円程度、「必ず返せる額」を借りるようになった。
しかし、取り立ては厳しかった。仮に2万円借り入れたとしても「手数料」と利息分が差し引かれ、1万数千円しか渡されない。1日の延滞でも元金の1割を加算され、連絡を忘れると罰金を科せられた。「返済が滞れば個人情報をばらまく」との脅し文句も送られてきた。それでも、融資を断られた経験から「借りられるだけまし」とも考えていた。
ある時、返済日にメッセージを送っても応答がなく、連絡が取れなくなった。既読も付かない。1カ月ほど後、見知らぬ番号から着信があった。かけ直すと、県警の捜査員が出た。「メビウスと取引があった人に話を聞いています」。2019年12月のことだった。
違法な金利を搾取され続けたとはいえ、どこからも借りられず当座をしのぐことができたのも事実。男性は「助かった側面もある」と複雑な心境を明かす。ただ、こう強調する。「もしグループが捕まらなかったら、今も違法な金利をずるずると返しながら、借金を繰り返していたかもしれない。違法には変わりはなく、借りるべきではないと今なら強く思える」
「返済滞れば個人情報ばらまく」 脅しと加算金で取り立て ソフトヤミ金被害者証言 長崎
2021/03/22 [10:59] 公開