長崎県発祥の外食大手リンガーハットの米濵和英会長(77)は長崎新聞のインタビューに応じた。新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化を受け「外販の強化や店舗の見直しにより、3年後には過去最高の売上高500億円を目指す」とした。
-2021年2月期の連結純損益は87億円の赤字を予想している。
コロナ禍前に全国約800店舗(長崎ちゃんぽんリンガーハット、とんかつ濵かつなど)あったが、不採算の約100店舗を閉めた。3タイプの立地条件のうち、郊外のロードサイド店の売り上げは回復しつつある。だがショッピングセンターのフードコートへの出店を近年増やしてきたのが裏目に出た。密を避け席数を絞れば減収となる。駅前などの都心型店も、テレワークの普及でオフィスにどれだけ人が戻るかは未知数だ。
-環境の変化にどう対応するのか。
お客さまの衛生観念も変わった。厳しい目に耐えられるよう厨房(ちゅうぼう)やトイレの改装を積極的に進めていく。長崎市三芳町で建て替え中の店舗が一つのモデルになる。1店舗当たりの売り上げを伸ばしたい。
巣ごもり消費でテークアウトが増えたので、冷めても伸びにくい麺、スープがこぼれない容器を開発した。冷凍品の売り上げは前年比50%増で20億円に迫っている。
-雇用と資金繰りは。
休業要請に応じた際、従業員の休業補償を自社で2割増しした。ただ、閉店した100店舗には約2千人が勤務。近隣店で優先雇用したが8割が退職し(経営者として)責任を感じている。資金は、第三者割当による新株予約権発行や劣後ローンにより、今の状況があと1年続いても耐えられるよう確保している。
-継続するものは。
常に品質アップを図っていかなければ生き残れない。毎週、役員が試食し出来を細かくチェックしている。
-再成長に転じる鍵は。
冷凍品とインターネット販売だろう。東京・銀座の卓袱浜勝は2年で閉めざるを得なくなった。これからの店舗はショールームの役割を担い、外販のウエートを大きくして全国に打って出る必要がある。
-数値目標は。
グループ全体で一時480億円あった売上高は、今期390億円に落ち込む見通し。できれば3年後に外販を50億円規模に引き上げ、初の500億円台を達成したい。
-これからも長崎発祥にこだわるのか。
それがわが社のアイデンティティーだ。「長崎ちゃんぽん」の看板を背負っており、地元のイメージを高める責任がある。おかげさまでサービス産業生産性協議会の顧客満足度ファストフード部門で4年連続1位を獲得した。クエ料理も「郷土の味の文化」になり得ると思っている。