長崎県南島原市と十八親和銀行などが1日、地域電子通貨「MINA(ミナ)コイン」の運用を開始した。新型コロナウイルス感染対策で「3密」を避けたキャッシュレス決済の普及と共に、お金の域内還流の促進を目指している。大手キャッシュレス決済サービスもある中、地域通貨が定着し、落ち込む消費の回復と地域経済の活性化の「有効打」になるか注目されている。
利用者がスマートフォンにチャージしたお金を「1コイン=1円」のMINAコインに変換、小売店や飲食店など市内加盟店での支払いに利用できる仕組み。チャージ額の1%がポイントとして付与され、「1ポイント=1円」としても利用できる。
市は導入に当たり、国の新型コロナウイルス感染症対策地方創生臨時交付金と地方創生推進交付金を活用。運用開始の1日は、チャージ額の50%をポイント付与する新規加入キャンペーン(3月15日まで、1人最大1万ポイント)の効果もあり、銀行窓口には利用登録、入金のために訪れる人が相次いだ。
加津佐町で中華料理店を営む濱龍一郎さん(42)は「(1~14日までの)売り上げの約2割がMINAコイン利用者。来店頻度が増えた。宴会需要が落ち込む中ありがたい」と喜ぶ。
市商工振興課によると、加盟店は運用開始時の256事業所から増え、今月中には300事業所を超える見込み。利用者は2週間で、約1万人がスマホに専用アプリをダウンロード。チャージ額は約1億4200万円、利用済み額は約4400万円に上っている。
一方、加盟を見送った市内の事業者は「潤沢な資本を誇る(ソフトバンク系のスマホ決済大手の)ペイペイのように大幅なポイント還元ができるのか。新鮮味が薄れるにつれ使う人は減るはず」と指摘。20代の男性会社員は「品ぞろえ豊富な大型量販店のある近隣市に車で出掛けて購入している」と地域通貨の効果を疑問視する声もある。
ポイント還元率などで大手スマホ決済サービスと競うのは難しいのが現実。その地域通貨だけの価値や利用者の満足感を、市や事業者が生み出せるかが事業定着の鍵になる。
市は「日常的な利用を促すことが大切」として、各種手数料支払いや税金の納付など行政サービスでも利用できるよう準備を進めている。同課は「市民はもちろん、仕事でお越しの方ら、市外の方にもMINAコインを利用いただき、地域活性化を目指したい」と意気込む。
南島原の電子通貨「MINAコイン」 活性化の「有効打」なるか 定着へ価値創出が鍵
2021/02/25 [12:30] 公開