長崎県水産物にベトナム熱視線 中国禁輸で打撃 飲食業者ら視察

2025/01/01 [10:30] 公開

水揚げされた鮮魚を前に水産関係者と話すベトナムの飲食店経営者ら=長崎市京泊3丁目、長崎魚市場

水揚げされた鮮魚を前に水産関係者と話すベトナムの飲食店経営者ら=長崎市京泊3丁目、長崎魚市場

  • 水揚げされた鮮魚を前に水産関係者と話すベトナムの飲食店経営者ら=長崎市京泊3丁目、長崎魚市場
  • 急速冷凍された高級魚の説明を聞くファン社長(中央)ら=長崎市京泊3丁目、県漁連の加工センター
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ベトナム最大の経済都市、ホーチミンとその近郊で水産物輸入業や飲食業などを営む8人が12月上旬、長崎県を訪れ、魚市場や水産加工施設を視察。中国が日本からの水産物輸入禁止を続ける中、新たな輸出先の開拓につながる可能性もあり、水産関係者や日本貿易振興機構(ジェトロ)長崎貿易情報センターなどは期待を寄せる。

 ジェトロ長崎によると、ベトナムでは日本産水産物の人気が高く、その中でも全国屈指の水揚げ量と魚種を誇る長崎の水産物は知名度、人気ともに高まっているという。今回はジェトロのホーチミン事務所に「長崎を訪問したい」と依頼があり、来崎につながった。
 8人は5、6の両日、ジェトロのスタッフと長崎市の長崎魚市場で競りや以西底引き網漁の水揚げを見学。佐世保、松浦両市の水産関連施設などにも足を運んだ。
 水産物の輸入・卸売りや飲食店を営むベトナムの企業、ヤマナカマートのファン・バン・ラン社長は東京、大阪などの市場から県内産を含む水産物を輸入しているが、「福岡から空輸できればより鮮度が高い状態で提供できる」と期待。長崎魚市場で取引される鮮魚や県漁連の加工センターで急速冷凍された高級魚を興味深そうに見つめた。
 県水産加工流通課によると、長崎県水産物の海外輸出額は2022年度に過去最高の約71億5千万円。このうち中国への輸出が約35%でトップだったが、23年8月からの禁輸が影響し、23年度は約64億1千万円に減少。中国が占める割合は約17%に減り、輸出額は韓国、米国、中国、ベトナムの順に変わった。
 こうした事態を受け、県は国際情勢による影響を減らすために多様な輸出国確保を目指している。24年度は海外への販路開拓事業費として約5900万円の予算を付けた。
 ジェトロ長崎の高橋淳所長は「国や県がリスク分散に取り組む中、今回は純粋に長崎の水産物の価値がベトナムの経営者を引きつけた」と今後の輸出拡大に期待。来日した飲食店経営者の1人は「2025年は長崎の水産物の特集をしたい。文化も合わせて紹介できれば」と笑顔で話した。