新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生、収束した長崎市目覚町の特別養護老人ホーム・ショートステイ「めざめ」の吉田憲史事務長(42)が10日、オンラインで講演し、感染が広がった経過などを語った。初回利用時に検査を徹底するなど今後の対策を挙げ、クラスターを起こさないためにも各施設で「感染管理レベルを上げてほしい」と呼び掛けた。
県内の高齢者施設ではこれまでに長崎、佐世保、諫早、平戸の4市7施設でクラスターが発生している。講演会は社会福祉法人ながよ光彩会(西彼長与町)が課題などへの認識を共有するため開き、県内の施設関係者ら約80人が聴講した。
長崎市の発表によると、昨年12月末、「めざめ」を短期で利用していた1人が発熱を訴え、帰宅。陽性が判明した。利用者や職員ら約70人を検査した結果、今年1月11日までに計14人(職員4、利用者・入所者10)の感染が確認された。
吉田事務長は講演で、クラスター発生フロアの職員7人が濃厚接触者と判断され、自宅やホテルで待機したことや、系列病院の看護師が応援に入り、感染拡大防止や利用者のケアに当たったことなどを説明。「刻一刻と状況が変わる中、情報を共有して方針を早く決めることが大切」と振り返った。対策本部を設けて、毎朝のミーティングで対応方針を決めたという。
また、看護師が応援に入り、個人防護具の完全装備を徹底した後は感染が広がらなかったとし、感染管理レベルを上げる必要性を強調。介護後の消毒徹底も訴え、「経験を共有して同じことが起きないように役立ててほしい」と呼び掛けた。
ながよ光彩会の貞松徹業務執行理事(42)は取材に「スタッフが自宅待機になれば外部からの支援がないとケア自体が止まってしまう。有事の際は互いに応援に行けるよう地域内の関係構築を深められれば」と述べた。聴講した50代女性看護師は「入院患者は高齢者が中心。いかに持ち込まず、感染させないかが大事だと思った」と話した。