国内外で日用品やインテリア、建築、地域などのデザインを手掛けた長崎県を代表するデザイナーで、今月13日に52歳で死去した城谷耕生さんの作品展「城谷耕生のプロダクトデザイン」が長崎市出島町の県美術館常設展示室第2室で開かれている。作品を通して城谷さんの多岐にわたる仕事をたどることができる。来年1月11日まで。
城谷さんは雲仙市小浜町出身。県立長崎工業高を卒業後、東京でデザインを学び、1991年にイタリアに渡った。ミラノを拠点にデザイナーとして活動。イタリアを代表するデザイナー、エンツォ・マーリ氏らに師事し、ミラノでグランデザイン最優秀賞(イタリア工業デザイン協会主催)などを受賞した。2002年、故郷小浜町に戻り、「STUDIO SHIROTANI」を設立。同町を拠点に日用品のデザインをはじめ、建築設計、まちづくりなども手掛け、国内外で注目を集めてきた。
城谷さんはデザインを、人目を引く新しい形を生み出すものではなく、「ものを作るという活動を通して人をつないでいく」ものだと語ってきた。1人で設計図を作製し、提供するだけでなく、多くの人たちとコミュニケーションを取りながら作品の共同研究を重ねた。特に九州の地場産業に関わり、地域文化や伝統技術、伝承される知恵などを入念にリサーチし、職人らと共に創作を追求。波佐見焼や福岡県の小石原焼、大分県の竹細工などのデザインを手掛けた。
会場には、同館所蔵と城谷さん所有の食器や照明、家具など約90点を展示。城谷さんの初期作品「TIPOシリーズ」からは、波佐見焼・三川内焼のミニボウルやカップ、ソーサーなど無駄のないシンプルな作品が並ぶ。「TIPO」はイタリア語で「原型」の意味。城谷さんは中に入れるものを選ばない多用途の器を生み出した。同館の川口佳子学芸員は「城谷さんはシンプルであるだけでなく、愛情や人間性を感じさせるような作品を手掛けた」と話す。
大分県別府市の竹細工職人と共同制作した「APTENIA ブラケットランプ」は、別府温泉を活用した調理法「地獄蒸し」から着想。蒸気を生かす新しい立体成形の方法を取り入れており、美しさとユニークさを感じる。
また、最新作の椅子「MICADO CHAIR」(プロトタイプ)、ホテル「パークハイアット東京」のギフトコレクションに採用された磁器なども並ぶ。
川口学芸員は「城谷さんはこれから集大成に入り、もっと評価される人だと思っていたので残念。身近に感じる作品ばかりなので、生活の中に取り入れるイメージを持ってもらえれば」と話した。
同館は1月1日まで休館。観覧料は一般420円、大学生・70歳以上は310円、小中高生210円(県内在住の小中学生は無料)だが、1月2、3の両日に限りすべて入場無料。