対馬・比田勝海保に女性職員 70年余の同署歴史で初めて 陸と海で活躍中

2024/06/27 [12:32] 公開

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長崎県対馬市上対馬町の比田勝海上保安署(上田誠二署長)に今春、髙﨑結衣さん(28)と田中光さん(24)が着任した。70年余の同署の歴史の中で女性が配属されたのは初めて。海保の女性職員増加も背景にあり、署内からは「もはや女性の存在は当たり前」という声も聞かれる。

 髙﨑さんは福岡県出身。福岡海上保安部を振り出しに五島海上保安署での勤務も経験。巡視船にも乗り組んだ。結婚・出産を経て、現在は福利厚生や採用を巡る学生への説明、船の補給関係といった陸上業務に携わる。
 比田勝への転勤には不安もあった。ただ、これまでの勤務では女性の同僚がいたこともあり「女性にしか話せないこともある」と実感してきた。一緒に着任した田中さんには「何かあったら言ってね」と声をかけている。
 補給関係で地元業者とやりとりする中で「比田勝に女性が転勤してきた」と驚かれることも。「初めてとなれば、こんなに注目されるんだと思った」と笑う。
 海上保安庁によると、女性職員は1980年9月に横浜と門司に計4人が配属されたのが最初。2023年4月1日時点の女性職員は1316人で、全職員の9%に当たる。
 県内の女性配属は1982年の長崎海上保安部が最初で、比田勝海上保安署は県内7カ所の保安部・保安署では6番目となった。
 海保では異動に際し、夫婦で同居できるように配慮もされている。髙﨑さんは、最近では自身の周囲でも結婚後も仕事を続けたり、育休から復帰したりするケースが多いという印象があるという。一方、子育てをしながら定年まで働く先輩はまだ少ないと感じている。「自身がロールモデルになれば」との思いがある。
 田中さんは佐賀県出身。長崎海上保安部でキャリアをスタート。船のエンジンなどのメンテナンスを手掛けてきた。比田勝海上保安署では巡視艇「あきぐも」に乗り組んでいる。離島勤務は今回が初めてで「初の女性配属」ではなく、島の仕事や生活に緊張や不安を感じていたという。
 だが同僚らには優しい雰囲気があり、溶け込むことができた。同じ女性の髙﨑さんの存在も大きい。船の同僚らも「もう女性がいるのが当たり前。(船を動かす上で)みんなに仕事をしてもらわないといけないので」と語る。
 「将来的には『女性海上保安官』という言葉がなくればいい」と語る髙﨑さん。どんな職場でも女性の存在が当たり前になれば-。笑顔の奥に、そんな思いをにじませた。