痛切な“叫び”が、アンケート用紙の自由記述欄にびっしりと記されている。油症認定患者の子や孫ら「次世代」を対象としたカネミ油症被害者支援センター(YSC)の実態調査。病状、生活の苦しさや将来への不安、やり場のない怒り-。次世代被害者や親たちの過去と現在が、ありありと浮かび上がってくる。
認定患者である親や祖父母らが主に回答。子や孫が直接答えていないのは、油症について知らされていないケースが多いことなどが要因だ。一方、親だからこそ知る子らの幼少期の病状や暮らしぶりが詳しく分かった。
■突然倒れる子
「母乳を与え始めた頃から徐々に肌が黒くなった」。認定患者の母親は、未認定の息子(21)の幼少期についてこう答えた。油症の主因ダイオキシン類は、汚染油を摂取した女性の胎盤や母乳を通じ、子に移行すると指摘されている。
「子どもの頃は自宅でゴロゴロすることが多く、運動靴を履いたことがない。食が細い」。45歳男性の症状。調査対象者49人の多くに幼少期から「異変」があった。選択式の設問では17人が全身倦怠感を訴えた。
47歳女性は「小学1年の時、学校から帰って玄関で倒れた。鼻血はしょっちゅう。骨の痛み。学校で走ると3日くらい休んだ」。突然倒れた例は他にも。幼少期の症状が、成人後も続くケースが少なくない。
■一面のにきび
「歯はボロボロでほとんどない」(45歳男性)、「小学校から現在まで常時歯科に通院。医者によると、その根が腐ってまた虫歯になる」(35歳女性)など、口の疾患も目立つ。子どもの頃に歯が生えない事例は4人。2014年以降、次世代被害者の先天性永久歯欠如を調べた医師や歯科医師は、「(一般的な)全国調査と比べても異常な出現頻度。ダイオキシン類が次世代や次々世代に及ぼす影響を示している可能性がある」と指摘する。
認定患者に多く見られる皮膚疾患も次世代に現れている。25歳男性は「小学校高学年の頃からにきびが出始めたが、25歳になっても収まらず、背中一面や顔などに及んでいる」。色素沈着のいわゆる“黒い赤ちゃん”として生まれた人も複数いた。
■言葉にできず
51歳と46歳の姉弟は生まれつき目が見えず、姉は腸の疾患のため2歳で人工肛門を取り付けるなど重い障害があったが、いずれも油症認定されていない。
「認定患者の姉と症状が似ている」(50歳女性)「親より症状が重い」(38歳女性)など、認定患者と似た症状が子どもにも多いとの指摘もある。
子どもの側も、不安や苦しみを親に隠していたり、うまく伝えられなかったりしている現状がある。31歳女性はこうつづった。「子どもには、親が心配すると考えて言えない悩みや、言葉に出せない次世代特有のつらさがある」