長崎県などに多いカネミ油症被害者の支援団体、カネミ油症被害者支援センター(YSC、東京)は3日、油症認定患者の子(2世)や孫(3世)ら次世代被害者49人を対象とした健康実態調査の結果を公表した。口や眼、関節、皮膚などの疾病を、いずれも6割前後が患っており、次世代被害者が複数の病状を抱えている現状が明らかになった。YSCは親世代の認定患者と似た症状が多いことも指摘している。1968年に発覚した油症事件で、次世代に特化した調査は初めて。
次世代被害者は、ダイオキシン類などに汚染された食用油の影響を母体を通じて受けた恐れがある。大半が患者認定されず、医療費補償などの救済策はない。YSCは「次世代の症状は深刻で、医療費や就労などに多くの問題がある。国は認定患者の子や孫を認定し次世代に特化した継続的な調査を実施すべき」とする。
調査は各地の被害者団体の協力を得て、1~6月に実施。認定患者を親や祖父母に持つ10~51歳の次世代被害者49人(男性27、女性22)の健康状態などを、主に親から聞き取ったり記入してもらったりした。次世代本人が回答したのは9件。親世代が差別や偏見を懸念し、子や孫に油症被害について伝えていないケースが多いためとみられる。
主に親が把握する次世代被害者の疾病をカテゴリー別に見ると、49人中30人が「口内」(虫歯になりやすい、顎(がく)関節症など)や「眼」(近視、ものもらいなど)を患っている。「骨・関節」(29人)「皮膚・爪」(27人)「アレルギー疾患」(26人)に関する病気も、それぞれ半数以上が訴えた。「その他」では、17人に全身倦怠(けんたい)感があった。
YSCは調査結果を、国が認定患者を対象にした過去の調査と比較。割合が高い具体的症状については「虫歯」や「湿疹」、「全身倦怠感」などが認定患者と重なると指摘する。自由記述欄でも、深刻な生活困窮や不安の声が寄せられた。
YSCと、患者でつくるカネミ油症被害者全国連絡会は3日、山本博司厚労副大臣と面会。今回の調査結果に加え、次世代被害者の認定や健康調査を求める要望書を提出した。
カネミ油症2、3世を初調査 複数の病状抱える
2020/12/04 [12:12] 公開