「勝って地域に恩返しを」壱岐 21世紀枠で選抜出場  長崎、人口約2万4千人の島

2025/01/25 [10:15] 公開

帽子を投げて喜ぶ壱岐の選手たち=壱岐市、壱岐高グラウンド

帽子を投げて喜ぶ壱岐の選手たち=壱岐市、壱岐高グラウンド

  • 帽子を投げて喜ぶ壱岐の選手たち=壱岐市、壱岐高グラウンド
  • 笑顔で喜びを表現する壱岐の選手たち=壱岐市、壱岐高グラウンド
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人口約2万4千人の島に夢の切符が届いた。昨秋の九州地区高校県大会で準優勝、続く九州大会で8強入りした壱岐が、長崎県勢初となる21世紀枠での選抜出場を決めた。主将の浦上脩吾は「幼いころからの夢が現実になった。地域の方々の支えがあっての甲子園。たくさんの方々を勇気づけるプレーをしたい」と言葉に力を込めた。
 午後3時半、インターネットでライブ配信された選考委員会の出場校発表。「選ばれたのは九州地区の壱岐」。瞬間、緊張感が漂っていた会場は歓喜の渦に包まれた。指を突き挙げて喜ぶ選手、抱き合って涙を流す保護者-。その姿を見守りながら、坂本徹監督は懸命に涙をこらえた。
 例年、多くの有望選手が島外の高校に進学する壱岐島。現2年生は2022年の県中総体、県少年軟式野球大会をそれぞれ制した勝本、郷ノ浦中のメンバーがそろって島に残った世代だ。「壱岐から甲子園」。同じ思いを共有して集まり、ひた向きに練習を続けて県、九州大会で結果を出した。
 それから約3カ月。21世紀枠で選出されるかどうかは抜きにして、チームは黙々と努力を重ねてきた。通常練習に加え、約5キロの丸太を抱えたダッシュ、地道な筋力トレーニング。その中で届いた春の吉報。選手たちの目線はワンランク上がった。「一つでも多く勝って地域の方々に恩返しがしたい」。多くの選手が同じ言葉を口にした。
 そんな島の球児たちが約2カ月後、高校野球の聖地に立つ。その姿はおそらく、困難な状況に苦しむ全国のチームに勇気を与えるはずだ。坂本監督が決意を口にした。「壱岐ができたから他の離島でもできる。ロールモデルではないが、そんな部分につなげていきたい」。だから、全力で勝ちにいく。

●壱岐高沿革
 壱岐市にある県立高校。桑原鉄次校長。生徒数は414人(男子203、女子211)。1909(明治42)年創立。48(昭和23)年に現校名となった。校訓は「自律 明朗 友愛」。硬式野球部は76(昭和51)年に創部。2024(令和6)年に秋の県大会で準優勝。続く九州大会で8強入りした。現部員数は1、2年生21人。主な卒業生にバレーボール元日本代表の北島武さん、2002年茨城インターハイ陸上女子100メートルで優勝した田口(旧姓長島)夏子さんらがいる。