過疎化進む市内で唯一、人口増加…雲仙市愛野町 着々と宅地開発、「田んぼ買って」依頼相次ぐ 長崎

長崎新聞 2025/03/18 [12:25] 公開

新築住居や分譲地が並ぶ新興住宅地。整備中の土地(手前)は農地だった=雲仙市愛野町

新築住居や分譲地が並ぶ新興住宅地。整備中の土地(手前)は農地だった=雲仙市愛野町

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長崎県雲仙市は、旧南高来郡の7町が2005年に合併して誕生した。現在の人口は約4万人。合併時に比べ1万人以上減り、過疎化が進む。しかし市北西部の愛野町だけは人口が増えている。市は人口増を好機ととらえ、愛野地区で冠水対策を実施するなど住環境を整備。一方で、同地区の「一極集中」ではなく「多極型のまちづくり」を目指している。

 「交通アクセスが良く、島原や諫早、小浜のどの方面にも行きやすい。将来、子どもの進学先も選択肢が広がると思う」。小浜町に畑を所有する農業の男性(28)が話す。諫早市の会社員女性(25)と結婚。昨年末、愛野町の集合住宅に新居を構えた。

 愛野町は面積11・72平方キロメートル。市全体のわずか5・5%と市内7町で最も小さいが、山間部がなく平たん地が多い。約5千人だった人口は合併時より2割以上増えて約6200人。2~3割減少している他の6町と対照的だ。

 市立愛野小では児童数が増えて、2年前に校舎を増築。19クラスになった。合併時、市内の小学校は分校を含め22校あったが、少子化で閉校が相次ぎ、25年度は16校になる。複式学級を取り入れる学校もある中、愛野小は児童数が合併時から40人ほど増え、24年度は418人になった。

 愛野町は島原半島の玄関口。半導体製造工場や大型商業施設が開業を予定する諫早市と隣接し、島原道路の整備でさらなる交通アクセス向上が期待される。県の調査によると、雲仙市の地価は合併直後と比べ全体で約3割下落しているが、愛野支所近くは約17%上昇している。

 諫早市の不動産業者は同町の魅力を「人口増加が見込まれる諫早へ通勤できる上に、諫早に比べて土地代が手ごろ。マイホームに手が届く」と話す。諫早からだけでなく、雲仙市内の国見町や南串山町から引っ越す若い世帯もいるという。

 全国的に空き家問題が深刻化する中で、愛野町では宅地開発が着々と進む。「後継ぎがいない高齢農家から『田んぼを買ってほしい』と依頼が相次ぐ」(不動産業者)。農地から宅地への転用はこの5年で80件、計8万平方メートル以上に上る。

 住宅に必要不可欠なのが「水」。市によると、15年度から9年間で給水戸数は517戸(23%)増加した。十分な水量を確保するため、隣接する千々石町からの送水施設を整備中で、25年度に完成する予定だ。下水道も人口増に対応できるよう、24年度から着工している。

 愛野町の一部では、大雨で排水路が氾濫するなどして冠水することがあった。市は新年度当初予算案に、愛野地区排水対策事業費4700万円を計上した。

 市全体の持続可能なまちづくりを進めるため、立地適正化計画策定事業費1600万円も盛り込んだ。金澤秀三郎市長は「他の地区にも医療、福祉、商業などの都市機能や居住が集中するエリアがあり、そこに人の流れを誘導したい。経済振興や企業誘致などにも引き続き取り組む」と市全域で過疎化を食い止める構想に意欲を見せている。