江戸時代、平戸藩主だった松浦家の歴史は古い。壇の浦の戦いに水軍を率いて参戦し、元寇ではモンゴル軍と戦った。朝鮮出兵にも従軍した▲歴史に残るいくつもの戦いにかかわってきたが、平和が訪れた江戸時代になると、学芸大名ともいわれる人物が登場した。9代藩主の松浦清(静山)。書籍や美術品、鉱物、植物にいたるまで、膨大な史料を集めた。今では江戸の文化や生活を知る上で貴重なものばかりだ▲収集品や代々伝わる武具などを譲り受けたのが平戸市にある松浦史料博物館。展示しているのは200点ほどだが、収蔵品は約3万点にも及ぶ。その展示されていない収蔵品の中から博物館の学芸員が選んだ史料を「平戸の宝物語」として紙面で紹介している▲1月に紹介した史料のうち静山の側室、蓮乗院(れんじょういん)の日記には、天気や風向き、家臣の母から「焼きあご」が届けられたことなど、当時の様子が垣間見える記述がある▲静山は江戸で集めた史料を、江戸は火事が多いので焼失しないようにと平戸へ運ばせ、楽歳堂文庫という施設をつくって大事に保管したと博物館の岡山芳治館長が教えてくれた▲これからも随時、収蔵品を紹介していく予定だ。紹介した史料は期間限定で展示される。ぜひ“お宝”を見て、守り伝えてきた人々にも思いをはせてほしい。(永)
松浦史料博物館
長崎新聞 2025/02/12 [10:01] 公開