爆心地のスピーチは降りしきる雨の中で行われた。「核兵器や大量破壊兵器を所有することは、平和と安定への望みを絶えず試みにさらすことになるのです」「核兵器から解放された平和な世界の理想を実現するにはすべての人の参加が必要です」▲野球場のミサには太陽の光が差し込んだ。「無数の殉教者の足跡に従い、私たちは一歩一歩を勇気を携えて歩みたいと思います」「真理と正義、聖性と恵み、愛と平和のみ国を告げ知らせる者が、もっともっと増えるように」▲ローマ教皇フランシスコが長崎を訪れた6年前の11月24日。冷たい雨が被爆地を包んだ。雷の音にげんなりしたことを覚えている。その雨が午後にはぴたりとやんだ。分かっている。お天気は巡り合わせだ。彼が“見せてくれた”のではない。それでも▲翌日の新聞を読み返してみた。〈分厚い雨雲はいつの間にか去り…〉-ドラマや映画なら出来すぎでも、あれは現実だ。記者の指が躍っている▲教皇フランシスコの死去をローマ教皇庁が発表した。戦争や核兵器を巡って果敢な発信を続けてきた。黒い雲に覆われて、いつまでも“雨”のやまない世界を強く温かく照らした言葉の光を改めて思う▲この雨は、ただじっと待っているだけではやまない。遺された言葉をもう一度かみ締める。(智)
教皇フランシスコ死去
長崎新聞 2025/04/22 [09:45] 公開