三菱重工業が長崎市飽の浦町の長崎造船所内に建設していた航空機エンジン部品工場が完成し、4日に現地でオープニングセレモニーがあった。来年10月にはフル生産に入り、2023年度以降の工場拡張も検討する。
三菱によると、新型コロナウイルス感染拡大で航空業界の需要は急減したが、国内線向け短・中距離旅客機は回復が比較的早い。長崎造船所にとっては、苦戦する造船と火力発電に続く事業の柱に成長しうると期待されている。
子会社の三菱重工航空エンジン(愛知県小牧市)の長崎工場として、船舶用プロペラ工場跡地に鉄骨一部2階建て5970平方メートルを建設した。投資額は約80億円。三菱が愛知県以外に航空エンジン事業の拠点を置くのは初めて。工場拡張用地も既に隣接地に確保している。
欧州の航空機大手エアバスの小型機「A320neo」に搭載する「PW1100G-JM」の燃焼器とそのケースの製造ラインを小牧本社工場から移管する。燃焼器は圧縮空気を燃料と混ぜて燃焼し、タービンを回す高温高圧ガスを発生させる装置。
長崎工場は33人体制でスタート。来年10月以降は90人体制で燃焼器を月90台、ケースを月24台製造、年間売上高100億円程度を見込んでいる。最新鋭の高速レーザー加工機を導入した。今後はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)技術で自動化・省力化を進め、1日24時間稼働する。サプライチェーン(部品の調達・供給網)構築を目指す県の働き掛けを受け、地元企業と協業に向けた交渉も始めている。
セレモニーでは椎葉邦男長崎造船所長や中村法道知事、納入先の米プラット&ホイットニー社の幹部らがテープカット。三菱重工航空エンジンの島内克幸社長はあいさつで「コロナの影響は大きくなく、コスト競争力や収益力のあるこの工場を1日も早く立ち上げたかった」と述べた。