新型コロナウイルス感染防止のため、初のネット開催となった第44回全国高校総合文化祭(ウェブ総文)が31日閉幕する。高知県に集まっての開催が中止され、全23部門で作品の画像・動画を公式サイトで公開するなどの形式を取っている。本県から15部門に31校計約320人が参加。「(ネットを通じて)多くの人に見てもらえた」などの肯定的な声の一方、「会場に行きたかった」と悔しさをにじませる生徒も。ネット開催を、より充実したものにする改善策を提言する人もいた。
◆“参加”を実感
新聞部門は、各参加校が制作した新聞を公式サイトで紹介。本県の3校のうち、長崎南高(長崎市)新聞部は、高知と長崎に共通する歴史上の人物、坂本龍馬のゆかりの地を地元で取材した「龍馬さるく新聞」を提出した。同部の2年、西宮大翔部長(17)は「高知に行けなかったのは残念だが、参加した実感はある。これが私たちにとっての総文祭」と満足そう。
吟詠剣詩舞部門に県合同チーム(6人)の一員として参加している、長崎女子商業高(同市)3年の細田愛琴さん(17)は「吟詠剣詩舞を知らない人、見たことのない人たちにも見てもらえたのはよかった。高校の同級生から『初めて見た』『かっこいい』と声をかけてもらい、うれしかった」と声を弾ませた。
◆本質伝わらず
「会場で作品を見て、制作過程や意図を聞きたかった。作品の本質はデジタルでは伝えられないし、周りからの評価も分からない」と話すのは、美術・工芸部門にデザイン画を出品した長崎日大高(諫早市)3年の佐藤愛華さん(17)。それでも、今回の経験が「今後、別に全国の舞台があれば出たい」という意欲につながったという。
県立長崎北高(長崎市)学芸部演劇班は、創作劇「アルキメデス・スリッパー」の動画が公式サイトで公開中。班員の一人で3年の青木貴広さん(17)は「観客のリアルな反応を感じられないし、(演技の)ニュアンスも伝わらない」と本音を漏らすが、「試行錯誤しながらやれることはやり切った」と話した。
◆普及のために
至近距離で対戦する囲碁、将棋、小倉百人一首かるたの3部門は、コロナ禍を受け県内の予選会さえ開けず、ウェブ総文でも競技が中止された。囲碁で総文祭出場を目指していた通信制「N高等学校」2年の平野伊吹さん(17)=諫早市=は「対局して情報交換をしたかった。囲碁の普及のためにも大会は絶やさないで」と注文。オンライン対戦などの手法を挙げた。
長崎南高新聞部は今回のコロナ禍で、ウェブ総文と別に、オンライン上で全国の複数の高校新聞部と交流を図った。西宮部長は「ウェブ総文でも、作品公開だけでなく、オンラインを活用した交流をしてもらうとスキルアップにもつながる」と提言した。
県高校文化連盟の原裕一理事長は「生徒は全国の雰囲気やドキドキ感を体験できず、指導者も含めて初のネット開催に戸惑った。それでも、県の代表者全員が頑張っていた」と話す。
ウェブ総文は文化庁、全国高校文化連盟などが主催し、7月31日開幕。県勢の作品は▽演劇▽合唱▽吹奏楽▽日本音楽▽郷土芸能▽吟詠剣詩舞▽マーチングバンド・バトントワリング▽美術・工芸▽書道▽写真▽弁論▽新聞▽文芸▽自然科学-の14部門で公式サイト(https://www.websoubun.com/)で公開中(放送部門は審査結果だけ)。公開は今月31日で終了する。