こんもりと茂った木々の間に、丸みを帯びた緑や茶色の畑が点在している。五島市の伝統的な土地の使い方を示す「円畑(まるはた)」。三井楽半島に多く残り、楕円(だえん)や四角に近い形など複雑な模様を描いている。でも、農作業には不便そう。なぜこんな形になったのだろう。
「牛が歩いて作ったんです」。五島列島ジオパーク推進協議会の専門員、髙場智博さん(31)が教えてくれた。五島の地質や地形、自然環境の日本ジオパーク認定を目指す同協議会。この円畑も、地形と人の暮らしが密に関わっている。
三井楽半島は、京ノ岳の火口からなだらかな斜面が続く溶岩台地。農業が機械化される前、畑に打ち込んだ杭(くい)に牛をつなぎ、同心円状に歩かせながら耕した。曲線の間を埋めるのは、主にツバキ。塩害や風に強く、元々自生していた木々が、そのまま防風林の役目を果たすようになった。円畑はかつて、島内各地にあったが、区画整理などで姿を消していった。
地上を歩いても、ただ木々に囲まれた畑があるだけで全貌は分からない。まさに空から楽しめる景観だ。「グーグルマップ」の衛星写真でも見られるが、無数の泡のような、何かの細胞のような…。実にいろいろな形がある。
【動画】五島・円畑 牛が描いた柔らかな曲線
2020/10/15 [17:00] 公開