防波堤の合間を縫うように、ジェットフォイルが港内へ滑り込んだ。真っ青な海面に描かれる白い「S」字の航跡。その後を追うように、フェリーがゆっくりと進む。五島市福江島の東に位置する福江港。春には別れを惜しむ紙テープが舞い、盆や正月には再会を喜ぶ家族連れであふれる。
市内には昨年、過去最多となる25万2657人の観光客らが訪れた。このうち19万人以上が、長崎市や福岡市などから船で上陸し、島内各地へ。福江港は、まさに島内と島外の交流を支える海の玄関口だ。
2005年完成の2階建てターミナルビルには、特産品や銘菓を陳列した土産物店が立ち並ぶ。春先から続く新型コロナウイルス禍で、一時は売り上げが例年の1割程度に落ち込むなど厳しい状況に見舞われた。それでもこの秋、少しずつ客が戻り始めている。
あらためて上空から海を眺めると、遠くには奈留島や椛島などを望む。久賀島や黄島、赤島を含め、福江港はこうした二次離島航路の発着点として、島民の暮らしを支える大切な拠点でもある。
島をたつ人を乗せ、フェリーが汽笛を鳴らして港を後にする。そばの岸壁ではアジやカマスを狙う釣り人たちが、のんびりと糸を垂らしていた。
【動画】五島・福江港「S」の航跡 交流と暮らし支える
2020/09/25 [10:00] 公開