「複合災害の学びの場に」 長崎大が福島・川内村で活動報告 東日本大震災きょう14年

2025/03/11 [10:02] 公開

福島県川内村の14年間の歩みを振り返る井出さん(右)と高村教授=同村、いわなの郷体験交流館

福島県川内村の14年間の歩みを振り返る井出さん(右)と高村教授=同村、いわなの郷体験交流館

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東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で14年を迎えるのを前に、長崎大は10日、復興推進拠点を置く福島県川内村で活動報告会を開いた。同原発30キロ圏でいち早く帰還した川内村。同大原爆後障害医療研究所の高村昇教授が村の復興対策課長だった井出寿一さん(71)と対談し「今の課題は交流人口の拡大。(大学生らの)複合災害に関する学びの場になるよう長崎大としても貢献したい」と話した。
 同大は、高村教授らが事故直後から同県内で放射線被ばくによる住民の健康リスク評価などに当たった。全村避難し2012年3月に役場機能を戻した川内村に13年に拠点を設置。21年にかけ周辺の富岡、大熊、双葉の3町にも開設した。16年度から同県内の3大学と報告会を開いている。
 対談で、井出さんは早期帰還を目指した村が前例のない除染作業などを迫られる中「私たちも村民も放射線について無知だった。長崎大が測定したデータが必要だった」と振り返った。
 事故から14年が経過し、発生当時約3千人いた村民は昨年12月時点で実際の居住人口が約1900人。一方で教育や経済など復興に資する教育研究のフィールドになっている。高村教授は「原発との距離などで(被災自治体間の)復興のフェーズが大きく異なる。交流人口は復興のフロントランナーである川内村だけの問題ではない」と、他の被災自治体のモデルケースになると強調した。
 報告会にはオンラインを含め計約100人が参加。町づくりや災害の記憶の継承、放射線被ばく医療などをテーマに、長崎大経済学部4年の黒木案仁さん(22)と同3年の坂口由芽さん(20)をはじめ、4大学の教員と学生計6組が活動報告した。