今年5月、長崎市の外輪莉乃さんは急性骨髄性白血病のため18歳でこの世を去った。菓子作りが好きで、将来の夢はパティシエ。2年間の闘病生活では最後まで弱気な姿を見せなかった。長崎市の精霊流しで、莉乃さんの好きなものであふれた3連の精霊船を、親族や友人ら約120人でにぎやかに送った。
莉乃さんが発病したのは2年前、高校2年になる春。「最後まで信じられなかった」と姉の心さん(20)。莉乃さんは学校に通えなくなったが、痛いなどの弱音を吐かず、治る日を信じて勉強に打ち込んでいた。それでも、次第に弱る妹の姿に「見てあげることしかできない。悔しかった」と振り返る。
カトリック信者のため精霊流しの風習はないが、長崎の伝統で送ろうと船を作った。教会を模した1連目、莉乃さんが好きだったスヌーピーをモチーフにした3連目。2連目には莉乃さんの写真があり、集まった友人が船体に言葉を記した。「出会ってくれてありがとう」「莉乃との思い出はどれも笑顔であふれてるよ」
友人らは「とにかく優しかった」と語り合い、そして、目を伏せた。「一緒にケーキつくろうね、旅行もしようねって…果たせなかった約束がいっぱいある」
担ぎ手は心さんがデザインしたTシャツを着て、莉乃さんが好きだった音楽を流しながら町を巡った。父親の宣弘さん(49)は担ぎ手に「最後まで、外輪家得意中の得意の笑顔で流したいと思います」と呼び掛けた。その声はかすかに震えていた。
しめやかに 精霊流し 『18歳の夢 乗せて』 白血病で亡くなった外輪さん
2020/08/16 [11:00] 公開