武家屋敷 活性化へ弾み 雲仙・国見 「神代小路ネットワーク」結成

2020/08/14 [14:00] 公開

神代小路ネットワークが手入れをする永松邸=雲仙市国見町

神代小路ネットワークが手入れをする永松邸=雲仙市国見町

  • 神代小路ネットワークが手入れをする永松邸=雲仙市国見町
  • 永松邸内から見える茅葺き屋根
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 国指定の重要文化財、旧鍋島家住宅(鍋島邸)など武家屋敷の町並みが残る長崎県雲仙市国見町の神代小路(こうじろくうじ)地区で、「NPO法人 神代小路ネットワーク」(佐藤浩孝理事長、15人)が結成され、景観保存や地域活性化への取り組みが加速し始めた。住民から市に譲渡された旧永松家住宅(永松邸)を、鍋島邸に続く中核として交流人口を増やし、空き家解消で定住人口の増加にもつなげていく。

 神代小路の「武家町」(約9.8ヘクタール)は、2005年に国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)に選定。江戸初期から明治の版籍奉還まで神代鍋島氏の所領で、鍋島邸のほか、家臣の武家屋敷、石垣や生け垣、水路が残り、住民でつくる「神代小路まちなみ保存会」が景観を守り続けてきた。
 伝建指定の屋敷の一つで、約300年前に建てられた永松邸を18年に市が管理するようになったのを機に、神代小路自治会や同保存会の有志7人が「旧永松邸を守る会」を結成。さらに地域全体へ目配りしようと、今年4月に「NPO法人 神代小路ネットワーク」へと組織を発展させた。永松邸内に事務所を置き、市の委託を受けて清掃や管理をしている。
 永松家は鍋島家の養育係の家系。邸宅は幾度か改修されたが、大型武家屋敷の初期の形態を多く残し、今も茅葺(かやぶ)き屋根や領主専用の玄関などを見ることができる。現在、市が補修に向けて調査している。伝建指定の屋敷は、景観保全のために外観の補修に規制があるが、内部は所有者が使いやすいように改修できる。
 ネットワークは、永松邸を地域活性化への起爆剤にしたい考えで、佐藤理事長(67)は「地域で最も古い屋敷なので見学できるようにしてもらいたい」と要望。現状では屋内の一部は天井板がなく、見上げると屋根の茅葺きが見える状態だが、「元々は天井板があったらしい。再び板を取り付けるのか、見物客に茅葺きを見せるようにしておくのか、補修の方向性をどう定めるのかが重要」とし、「例えば、厨房(ちゅうぼう)と座敷を生かして、喫茶スペースを設けられないか」とも考えている。
 神代小路では住民の高齢化も大きな課題。伝建指定の屋敷は約20軒あるが、うち10軒近くが空き家か、親族らが定期的に訪れて管理している状態で、庭や家屋の手入れが行き届かない屋敷も目立ってきた。ネットワークは、空き家の所有者から依頼があれば、家屋の換気や草刈りなどを請け負うことも想定。所有者と相談しながら、事業所や移住者向けの住宅にしたり、宿泊用に改修できないか活用方法を模索している。
 会員は50~60代が中心で、地域では“若手”だという。佐藤理事長は「交流人口を増やしたい住民もいれば、静かに暮らしたい住民もいる。地域の意見を尊重しながら活動し、何ができるのかを探っていきたい」と、武家町を守り続けてきた地域への敬意を忘れない。