新型コロナウイルス感染拡大の影響でアルバイト先を失った長崎県内の大学生らが窮地に立たされている。食費、家賃、学費、就職活動費…。国や各大学も支援を急いでいるが、学生からは「退学したくない」「夢を諦めなければいけないのか」と悲痛な声が聞こえてくる。
▼「今は我慢」
長崎市内のスーパーの精肉コーナー。県内の男子大学院生(22)はパックを手に取り、買い物かごに入れた。フロアを一周し、「今は我慢」。肉のパックを戻し、代わりに一袋20円のモヤシを購入した。ここ最近、肉や魚は満足に食べていない。モヤシやタマネギなど安価な野菜でかさ増しをし、食いつないでいる。
新型コロナの影響でアルバイトがなくなり、4月から収入はゼロになった。この先3カ月の家賃はすでに支払いを待ってもらうようお願いした。「こういう状況だから」。嫌な顔ひとつせず受け入れてくれた大家の温情に支えられている。
母子家庭で育ち、高校3年の時、母に金銭面で負担をかけずに大学に進学すると決意。だから、今の窮状も母には相談していない。貯金はもうすぐ底をつく。政府から一律給付される10万円も家賃で消える。「この状況が続くと耐えられなくなる」
▼募集少なく
県立大佐世保校3年の高辻雄太さん(20)は、ブライダルスタッフのアルバイトの仕事がなくなったため、今月から大村市内の実家に身を寄せている。
学費と生活費は全てアルバイト代と奨学金で賄ってきた。県外の大学に進学した妹もおり、実家も金銭的な余裕はない。「いつまでも世話にはなれない」。新しい働き口を探しているが、コロナの影響で募集自体が少なく、次が見つかるめどは立っていない。
高辻さんは苦しい胸の内を明かす。「将来の目標があって大学に進学した。これまでなんとか頑張ってきたので途中で退学はしたくないです」
彼らのような困窮する学生を対象に、文部科学省は1人10万円を支給する方向で準備を進め、県内の各大学も独自の給付金や学費の納付期限延長など支援策を打ち出している。だが、それらはあくまで一時的なもので、学生は将来への不安を拭い切れていない。
▼就活に不安
「就活ができるのか、先行きが見通せない」。県内の女子大学院生(23)は就職活動への影響を懸念する。医学の歴史が深い長崎の地に魅力を感じ、千葉から進学。薬学を学んできた。しかし今は、コロナが学びの場へ暗い影を落とす。研究室への出入りは禁止。今後禁止が解除された後も、居酒屋など人が密集する場所に出入りした場合、2週間の自宅待機というルールが定められた。
「研究ができなければ長崎に来た意味がない」。4月初旬に居酒屋のアルバイトを辞め、人との接触が少ない早朝の品だしの仕事に替えた。それによって収入は減少。先輩たちからは、就活には交通費など100万円近くかかったと聞く。「今のままでは到底足りない。夢を諦めなければいけなくなるのか」。将来に対し、ため息が漏れる。