諫早版「小さな拠点」など 定住促進へ規制緩和策が奏功

2020/04/03 [15:15] 公開

4月から拠点地区に追加され、土地利用の活発化が期待されるJR市布駅周辺=諫早市多良見町

4月から拠点地区に追加され、土地利用の活発化が期待されるJR市布駅周辺=諫早市多良見町

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 定住人口の増加を目指し、諫早市が進めている市街化調整区域内での土地利用の規制緩和策が成果を上げている。100メートル以内の間隔で40戸以上の一戸建て住宅が連続する地域「40戸連たん制度」や、対象者の範囲を拡充した分家住宅制度によって、2011~18年度における年平均の建築戸数は制度導入前の3.6倍増、96戸に伸び、土地利用が活発化している。

 同市内は住宅地向けの市街化区域が少なく、持ち家を希望する世帯が大村市に流出していた。その流れに歯止めをかけようと、同市は11年4月、県から開発許可の権限移譲を受け、市街化調整区域での定住促進対策に乗り出した。
 40戸連たん制度などに続き、小野、長田、本野の3地区を拠点地区に位置付けた「諫早版『小さな拠点』」が15年度から開始。各地区の学校や駅、市出張所を中心に半径500メートル内で一戸建て住宅のほか、保育所や事務所、老人福祉施設、アパートなどの建築を認めた。居住や行政機能を一定の地域内に集約するコンパクトシティーの理念に基づいた制度だ。
 多良見町中里、市布両地区も4月から拠点地区に追加。JR市布駅と喜々津小、中学校、長崎自動車道長崎多良見インターチェンジ周辺からそれぞれ半径500メートル内が対象となる。民間事業者による宅地開発やアパート新築を促し、定住人口の増加につなげる。
 このほか、国道など幹線道路沿いの沿道地区(総延長29.8キロ)でも、店舗面積が千平方メートル以内で延べ床面積が1500平方メートル以内の建築物の建築を認める。住みやすさに配慮し、生活利便施設の立地を誘導する狙いだ。
 市開発支援課によると、11~18年度、市街化調整区域内に立地した770戸のうち、40戸連たん制度を活用したのが531戸。土地所有者の3親等以内の親族や過去10年以上、同区域内に継続して居住した人も含めた分家住宅制度では116戸。両制度による立地計647戸は同区域内への立地全体の84%を占める。
 諫早版「小さな拠点」3地区のうち、長田地区で5棟60戸、小野地区では1棟18戸のアパートが新築。近隣の小野、長田両小学校の児童数がここ数年、増加に転じた。しかし、本野地区では実績がない。
 土地利用が活発化する一方、課題も残る。これまで未利用だった土地に数十戸単位の一戸建て住宅やアパートが新築されるため、狭い生活道路の安全確保や下水道接続に時間を要するケースも。市が目標とするコンパクトシティーに逆行し、土地のスプロール化(空洞化)を懸念するという見方もある。
 05年3月の市町合併時、14万4千人だった人口は20年3月現在、約13万4300人まで減少。一方、世帯数は約5万3千世帯で、05年より約3千世帯増えた。同課は「核家族化もあるが、諫早市を選んで住む人が増えているとみてもいい」とし、現行制度を活用した規制緩和策を継続する。