先端技術で次世代養殖研究 長崎大が戦略会議発足へ 低コストと安定生産目指す

2020/03/06 [15:00] 公開

 長崎大は、低コストで安定生産を実現するためIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用する次世代養殖の研究に取り組む。民間企業や漁業者らと共に、養殖魚を巡る課題解決に向けた技術開発などに取り組む戦略会議を近く発足。ブリなどの養殖基盤を整え、海外展開につなげる。関係者は「長崎の水産業の復活を目指す」としている。

 水産業を巡っては人口減少で国内市場が縮小し、販路開拓は欠かせない。旬がある天然魚と違い、養殖魚は一年を通して味の安定化が可能。海外では和食ブームに加え、安全面で日本産の評価も高く、中国を中心とした海外への売り込みを見据える。まずは海外で消費が増えているブリや、今後輸出が進む可能性があるトラフグなどの養殖基盤づくりを進める。
 長崎大海洋未来イノベーション機構の征矢野(そやの)清副機構長が今後の養殖形態として確立を目指すのが(1)浮沈式いけすを導入した「大規模沖合養殖」(2)くみ上げた海水を浄化して再利用する閉鎖型循環の「陸上養殖」、または海水を水槽にくみ上げる掛け流しを併用したハイブリッド型の「陸上養殖」。
 大規模沖合養殖は一定の水深までいけすを沈めることで、波や風の影響を受けやすい沖合でも大規模な養殖が可能になる。主流となっている沿岸での養殖に比べて生産拡大も見込める。陸上養殖は、赤潮による瀕死(ひんし)を避けるなどの利点がある。
 ただ二つの形態は現状では本格的な産業化にいたっておらず、技術力も不足しているという。加えて大規模沖合養殖は沿岸養殖に比べて給餌に時間がかかり、頻繁な魚の状態観察が難しいなどの課題も残る。
 そこで必要になるのがIoTの活用や魚類監視用ロボットなどの開発。これらを活用できれば、餌やりのタイミングや量の調整、養殖魚の健康状態を漁業者が遠隔で操作し、いけすの管理ができる。近く立ち上げる「次世代養殖戦略会議」では、必要に応じて研究グループを設置。大学と企業などが技術開発や共同研究、産業化を進める。戦略会議には誰でも参加可能。異分野との連携も想定している。
 征矢野副機構長は「漁業者の課題を端緒に養殖にかかわる新しい産業をつくり出すことができれば、多くの海洋産業が生まれ、雇用創出にもつながる。海洋県としてのプライドを見せたい」としている。