長崎原爆が題材の映画、県立大サークルが製作…ユーチューブで公開「世界に発信、大きな意味」

長崎新聞 2025/04/14 [12:20] 公開

「今日も咲く花のように」の一場面©2025 University of Nagasaki / SeaCaT

「今日も咲く花のように」の一場面©2025 University of Nagasaki / SeaCaT

  • 「今日も咲く花のように」の一場面©2025 University of Nagasaki / SeaCaT
  • 舞台あいさつで登壇した金澤さん(左から4人目)ら出演者と監督の因幡さん(右端)=長崎市平野町、平和会館ホール
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県立大シーボルト校の学生サークル「映画研究会SeaCaT(シーキャット)」(13人)が映画「今日も咲く花のように」を自主製作し、長崎市内で市民向けの無料上映会を開いた。同研究会は「戦後80年の節目に、長崎に住む学生が長崎原爆を題材にした映画を製作し、世界に発信することに大きな意味がある」として、シーキャットの公式ユーチューブでの公開を予定している。

 長崎原爆の史実に着想を得たフィクションで、2025年に生きる高校生、羽澄花が主人公。80年前、写真家だった曽祖父を含む多くの命が長崎原爆で奪われた。曽祖父が生前、祖母に手渡していた1枚のヒマワリの写真は、祖母にとって「明日を生きる希望」になった。「あの日起きたことを、この先何百年も継承していかねばならない」。祖母の思いを伝えられた花は、自分の進むべき道を考えていく。
 映画は約50分。80年前の長崎の回想シーンでは、当時を感じさせる古びた建物や衣装を使って撮影。被爆の惨状は当時の資料写真に煙や炎を加えて映像化した。映画の中でも特に重要なヒマワリ畑のシーンは、島原市の「しまばら火張山花公園」でロケを行った。熊本大映画研究会が撮影に協力した。
 3月29日に開いた上映会の舞台あいさつで、花役の金澤澄蓮さん(17)=県立諫早高3年=は「この映画を通して戦争の恐ろしさや平和の尊さをより多くの人に感じてほしい」と会場の参加者に呼びかけた。
 監修を依頼され、自らの被爆体験を学生に伝えたという長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)監事の長野靖男さん(82)は、取材に対し「原爆が後々まで人間に影響を与えることが描かれ、悲惨な場面も実写版で挿入されていて良かった」と感想。監督・脚本を務めた因幡大輝さん(21)=県立大国際社会学部4年=は「戦争映画はセンシティブだが、今ある自分たちの幸せは、過去に苦しいことを耐え抜いてきた人の上にある。それを伝えたかった」と言葉に力を込めた。
 因幡さんは各シーンに合う音楽も十数曲作曲。金澤さんは「監督の優しい音楽が心に刺さった。多くの方の協力があったからこそ想像以上にすてきな映画に仕上がった」と述べた。
 今後、英語字幕版を製作。DVDやサウンドトラックも作る予定。