カネミ油症事件の発覚から56年 世代超えた被害把握が急務 長崎・五島

2024/10/10 [11:20] 公開

カネミ油症事件の発覚から10日で56年。油症被害者が多い五島市によると、本年3月末時点の全国の認定患者数2377人(死亡含む)のうち、42%に当たる999人が長崎県(うち同市905人)という。汚染油を直接摂取した世代の子どもら「次世代」で油症認定されているのは全国で61人にとどまっており、世代を超えた被害の実態把握が急務となっている。
 油症は、カネミ倉庫(北九州市)が食用米ぬか油を製造中、カネカ(大阪市、旧鐘淵化学工業)製ポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入し、西日本一帯で販売され1968年に発覚。PCBの一部はダイオキシン類に変化し、被害者は多様な症状に見舞われ、当初約1万4千人が被害を届けた。ダイオキシン類が母親の胎盤や母乳を通じ、子らに移行する可能性も指摘されている。
 五島市によると、認定患者数のうち生存者は全国で1282人、うち長崎県は422人、同市は251人。次世代(2世)の認定患者数は全国61人のうち長崎県は13人、同市は6人。一方、厚生労働省による2023年度の次世代調査は全国で216人が参加し、うち176人が子世代、40人が孫世代だった。現行の診断基準はダイオキシン類の血中濃度を重視しており、自覚症状を訴えても基準を満たさず救済の対象とならない被害者が数多く存在する。
 同市と市議会は先月、衆議院厚生労働委員会に▽診断基準の見直しと次世代被害者(2世・3世)の速やかな救済▽認定被害者への健康調査支援金とカネミ倉庫からの一時金の増額-を要望。新基準策定は症状の有無や家族歴を考慮するよう求めた。また、12年施行の救済法で認定患者には年間で健康調査支援金19万円とカネミ倉庫の一時金5万円程度が支給されているが、同支援金について「被爆者の健康管理手当」と同水準(月額3万6900円)への引き上げを要望した。
 同市の出口太市長は「被害者の高齢化が進む中、いまだに多くの被害者が健康被害と生活上の困難や子や孫たちの将来への不安に苦しんでいる」とし、次世代を含めた未認定問題の解決を目指すとしている。