三菱重工業は18日、長崎造船所香焼工場(長崎市香焼町)の売却を含めた検討を開始することで、大島造船所(西海市)と合意したと正式発表した。両社は譲渡範囲などを詰め、来年3月までの合意を目指す。三菱重工は主力の液化天然ガス(LNG)運搬船の受注環境悪化を踏まえ、本工場(立神工場、長崎市飽の浦町など)での収益力の高い船舶建造・修繕に注力したい考え。
LNG船の需要は長期的に拡大が見込まれるが、三菱重工は、政府の支援が手厚い中韓メーカーとのコスト競争で苦戦、受注・生産が途絶えている。香焼工場の手持ち工事量は液化石油ガス(LPG)運搬船3隻と大型タンカー1隻で2021年までに引き渡す。
三菱重工は「今後とも比較優位性を維持し、付加価値を高められる船舶に経営資源を集中することで、造船事業を持続的に発展させていく」とコメントした。具体的には、艦艇やフェリー、荷物を積んだトラックごと積み込める貨物船「RORO船」に注力。本工場の設備新鋭化やLNG船建造技術の他社への供与、修繕事業の拡大を図る。
譲渡交渉の対象は香焼工場の175万平方メートルのうち造船エリアの120万平方メートル。従業員約600人の処遇も今後決める。
大島造船所は取材に対し「購入も含め、どんな選択肢があるか両社で検討を始めた段階。決定した事項はない」としている。
18日、香焼工場に本社を置く三菱重工海洋鉄構の椎葉邦男社長、大島造船所の平賀英一社長らが県庁を訪ね、中村法道知事に報告した。三菱側は本工場の機能拡充や客船修繕事業の拠点化推進、大島側はバルクキャリアー(ばら積み貨物船)建造のスピードアップを図る意向をそれぞれ示したという。
中村知事は終了後の取材に「大変厳しい経営環境の中でも、長崎ゆかりの企業間で協議を進めるという選択はありがたい。造船で長く仕事をしてきた協力企業が多いので、地域経済を支える基幹産業の一つとして事業が継続されるよう期待したい」と述べた。