長崎県産魚介類 “最速”で首都圏へ 空輸で即日輸送 ANA、県漁連など企画

長崎新聞 2025/02/04 [12:10] 公開

長崎県で水揚げされた魚が並び、買い物客でにぎわう店内=茨城県つくば市、カスミブランデ研究学園店

長崎県で水揚げされた魚が並び、買い物客でにぎわう店内=茨城県つくば市、カスミブランデ研究学園店

  • 長崎県で水揚げされた魚が並び、買い物客でにぎわう店内=茨城県つくば市、カスミブランデ研究学園店
  • 配送用に魚を箱に詰める県漁連の職員=長崎市、県漁連長崎漁港加工センター
  • 箱に入れた鮮魚を積み込んだ航空機の貨物用コンテナ=大村市、長崎空港
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全日空(ANA)長崎支店などは、昨年から長崎県で水揚げされた鮮魚を空輸で即日輸送し、首都圏で販売することで長崎県水産物の販路拡大を支援する実証事業に取り組んでいる。魚介類は陸路輸送が多いが、空輸だと当日に販売できるメリットがある。2回目の実証事業があった1月25日、魚が長崎の市場を出発し消費者の手に届くまでの輸送現場に密着した。

 まだ暗い午前5時ごろ、長崎市京泊3丁目の長崎魚市場には仲買人のかけ声が響き、鮮魚が次々と競り落とされていた。天候が良かったためか、水揚げは好調。新鮮なブリやキンメダイ、イカなどの魚介類が所狭しと並んでいた。
 実証事業は、ANAと県漁連、北関東のスーパーチェーン「カスミ」(茨城県つくば市)が連携し、企画。この日は、県漁連が首都圏での販売用にタイやアジなど16魚種を落札。「陸路と比べても空輸は鮮度を落とさず最高品質で首都圏に届く。これまで以上に長崎の魚の良さが伝わるはず」。県漁連の野口恭平さんは、陸送より格段に速い空輸を活用した同事業についてこう期待を膨らませた。
 箱詰めした鮮魚を積んだトラックは午前8時40分ごろ、長崎空港へ出発。鮮魚72箱やかまぼこを空港の貨物エリアで航空機用のコンテナに積み込み、羽田空港へ飛び立った。
 実証事業は2023年2月、ANAホールディングスと県が、長崎空港の利用促進や県産品の販路拡大を目指して連携協定を結んだことで実現。県の助成金を活用し、ANAが事業の企画や販売先でのPRを担う。
 ANA長崎支店の山口直之マネジャーによると、首都圏向けの陸路輸送は物流業界における「2024年問題」の影響もあり、従来に比べ時間を要している。首都圏の市場を経由することもあり、鮮度への不安があった。山口マネジャーは「当日配送ができるため、地元の人と同じように新鮮なまま食べられる」と空輸の利点を語る。
 今回はカスミが運営する東京、埼玉、茨城の4店舗で販売。記者が同行したのは茨城県つくば市の「カスミブランデ研究学園店」。長崎の市場で競り落とされた約10時間後の午後3時過ぎ、魚を積んだトラックが店舗に到着した。
 「長崎県産フェア」の開催がホームページや店舗で告知されていたこともあり、店内に運び込まれると、買い物客が一気に押し寄せた。箱を開けると、新鮮な魚がお目見え。ウチワエビはまだ動いていて、生きの良さが分かる。
 買い物客に取材すると、「新鮮さ」を理由に多くの人が刺し身で食べると答えた。つくば市の会社員、中嶌周さん(44)はメジナやカワハギなどを購入。「新鮮だと臭みもなく、子どもたちも喜んで食べてくれるからありがたい」。根本芳成さん(59)は「お酒と一緒に刺し身で。(フェア開催を)知った時からこの日が楽しみだった」と笑顔を浮かべた。
 ANA長崎支店の山口マネジャーは「想像以上に喜ばれていた。高速輸送を活用することで新鮮な長崎の魚をアピールできる。県産品の販路拡大など地域課題の解決の一助にもなれば」と語った。