幸福度の低い日本

長崎新聞 2025/04/23 [09:45] 公開

食べ飽きるほどのぜいたくな生活をしている社会をかつて「飽食の時代」と言い表した。〈服あふれ靴あふれ籠にパンあふれ足るを知らざる国となり果つ〉富小路禎子(とみのこうじ・よしこ)▲日本人の生活をよく言い当てた「飽食」だが、今はもはや死語かもしれない。フランスに本部を置く世論調査会社が昨年12月~今年1月、世界30カ国の2万3千人余りの幸福度を調べたところ、日本人の度合いはかなり低かった▲幸せかどうか聞くと「とても幸せ」「どちらかといえば幸せ」という回答が日本では計60%で、30カ国中27位にとどまる。一方、幸せではない理由を尋ねたところ「経済的な状況」が多数を占めた▲経済的な理由で幸福を感じられない人が日本には多いらしい。さらに「自分の生活の質はとても高い」という答えが日本では13%にすぎず、最も低かった▲経済的なレベルにしろ生活の質にしろ、客観的には日本が最低水準とはとても思えない。何よりも「経済的な豊かさ」を幸福度や生活の質の物差しにしてきたあまり、豊かさを感じにくい今の生活はよけいに幸せが遠く見えるのかもしれない▲幸せと思う理由で多いのは「家族との関係」「感謝されている・愛されていると感じる」だった。「足るを知らざる」時代にはあまり見えなかった“幸せの形”なのだろう。(徹)