被爆詩人・故福田須磨子さんの作品引用 長崎市長が平和宣言の骨子発表 核の非人道性表現

2024/08/03 [10:30] 公開

2024年長崎平和宣言(骨子)

2024年長崎平和宣言(骨子)

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長崎市の鈴木史朗市長は2日、長崎原爆の日(9日)の平和祈念式典で読み上げる長崎平和宣言の骨子を発表した。長崎を代表する被爆詩人、故福田須磨子さん(1974年に52歳で死去)の詩を引用し、核兵器の非人道性を伝える。ウクライナや中東で「悲惨な状況」が続く中、核兵器不使用の規範が揺らいでいると危機感を表明する一方、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃には具体的に言及しない。
 会見した鈴木市長は「国際的に核抑止の風潮が強まりかねないという強い懸念がある。核保有国や『核の傘』の下にある国は核兵器廃絶に向けてかじを切るよう求め、市民社会には当事者として行動することを強く呼びかけたい」と述べた。
 平和宣言起草委の会合は5~7月に計3回あり、当初は複数の委員がガザの非人道的な状況に言及するよう求めた。さらに市が6月に示した原案は戦闘の「当事国」としてイスラエルの国名を明示したが、7月の修正案では一転して削り、「中東における武力攻撃が深刻化」と表現した。
 鈴木市長は「委員からは特定の国以外にも(イランなど)いろいろな動きがあり、全体として国際安全保障環境が悪化していると訴える必要があるとの意見があった」と説明。中東については「包括的に記載」する一方、ロシアのウクライナ侵攻は具体的に触れる。
 福田さんは23歳の時に被爆し、両親や長姉は爆死。戦後は病や貧困に苦しみながら「ひとりごと」「原爆を作る人々に」など多くの作品を発表し、「反原爆」を訴え続けた。今年で没後50年となる。鈴木市長は、福田さんの詩を用いる理由について「核兵器がもたらす非人道的な結末や、被爆者の魂の叫びが表現され、ふさわしい」と語った。
 日本政府には被爆体験者救済を求め、核兵器禁止条約の署名・批准、憲法の平和理念堅持も訴える。
 宣言文は被爆者や有識者ら15人の起草委員で検討。英語や中国語、ロシア語など10カ国語に翻訳し、市ホームページに掲載する。