世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する「端島炭坑」(軍艦島)で7月、アスベスト(石綿)とみられる繊維物質が検出された問題で、防災工学の専門家が2010年以降に計4回にわたり、長崎市に石綿の除去や本格調査の必要性を提言したり、申し入れていたりしていたことが5日、分かった。
長崎市はこのうち3回を現時点で把握しておらず、今後記録の有無を調査するとしている。
専門家は、軍艦島の調査に長年取り組んできた福岡市の長崎大名誉教授、後藤惠之輔氏。後藤氏によると2010年2月、島内の建物に石綿が使われている可能性が高いとして、後藤氏が調査することを市の担当課長に提言。3月に申し入れ書を提出し、6月には田上富久市長と面談して調査を進言した。2011年12月には旧病院の建物内で石綿とみられる物質を確認。2012年3月に長崎市に報告書を提出し、石綿が飛散する危険性があるとして除去を求めたという。
長崎市観光政策課によると、市は2009年の軍艦島上陸解禁以前から、島内の建物に石綿が使用されている可能性が高いことを把握。上陸解禁後に調査を開始しており、2010年3月の後藤氏の調査申し入れは断った。ただ、担当課長や田上市長との面談と2012年の報告書については確認できないという。今後、石綿を除去しなかった理由や報告書など記録の有無を、当時の担当者らに聞き取って調査する。
後藤氏は「市民、観光客、上陸ツアー業者が困っている。自分の思いが伝わらなくて残念だ」と話している。