元徴用工問題や半導体材料の輸出規制強化を巡り、日本と韓国の対立が深まる中、国境の島・対馬市で韓国人観光客が激減し、観光関連業者が打撃を受けている。長崎県対馬振興局の調査では、特に団体客の減少が目立つ。長崎県の担当者は「事態がいつ収束するか見通せない。今後さらに減少する可能性がある」と危機感を強めている。
県対馬振興局は30日、ホテルや民宿など島内宿泊施設25社に日韓関係悪化の影響を調査した結果を発表。それによると、宿泊者数は前年比5割減の施設が多く、8月は8~9割減の見通しという施設もあった。担当者は「7月から予約キャンセルが発生し、厳しい状況だ」と話す。
日曜の28日昼。対馬市厳原町中心部にある免税品店「蔵」は韓国人観光客の姿がなく、閑散としていた。韓国・釜山市出身の副店長、金(キム)貞英(ジョンヨン)さん(30)は「普段、夏場の日曜なら1日50人は入る。朝に釜山から来るはずだった船が運休している」と肩を落とした。
対馬市などによると、釜山から対馬への船便を運航する6社のうち、2社が今月から運休。3社が減便している。
対馬で免税品店やスーパーなどを運営する対馬振興開発の武末裕雄会長(75)は「宿泊やレンタカーなどさまざまな業種が影響を受けている」と指摘。「釜山からの船便運休は対馬にとって蛇口が締められるようなもの。長く続くと島内の業者は干上がってしまう」と懸念する。
釜山と対馬南部の厳原港間でフェリーを運航している対伸(対馬市)は8日から運休。波田政和社長(62)は「輸出規制強化の話が出て以降、予約取り消しが相次いだ」と落胆する。
業者は一様に日韓関係改善に望みを託す。対馬市厳原町でホテルを経営し、対馬観光物産協会長も務める江口栄さん(64)は、李(イ)明博(ミョンバク)大統領(当時)が島根県・竹島に上陸した2012年を例に挙げ「当時は半年ほどで回復した。今回も数カ月で収まってほしい」と祈るような表情だ。
一方、同市美津島町のホテルで支配人を務める30代の韓国人男性は、文(ムン)在寅(ジェイン)大統領の任期が残り2年近くあることを挙げ「韓国人客の減少は年単位で続く可能性が高い」と気をもんでいる。