長崎県対馬市上県町の一般社団法人MIT(ミット)と、同町のアクセサリー職人・小宮翔さん(32)が、磯焼けの一因とされるウニの一種「ガンガゼ」の殻を使ったオブジェ作りに成功した。黒くとげとげしいガンガゼが、白くすべすべとした現代アート作品のように変身している。MITの吉野元・代表理事(38)は「これまで迷惑がられていたガンガゼも、一手間かけることで地域資源となる。小宮さんと協力して商品化を目指していきたい」と意気込んでいる。
ガンガゼは長いとげまで入れると全長約40センチ。雑食性で海藻を食い尽くしてしまう海の“厄介者”である上、とげには刺さると激痛が走る毒がある。殻の中の身には独特のえぐみがあり、駆除後の活用策が課題だった。
オブジェにはとげを取り払った殻(直径約10センチ)を利用。複数の工程を経て漂白した殻の表面には、とげのあった跡がドット状に並び、レースのような細かい網目模様も浮かび上がっている。
ガンガゼの殻の厚さは約0.2ミリで、加工した作品は純白。白熱電球を中でともせば温かな乳白色の光で辺りを照らすランプシェードに、殻上部の穴にエアープランツなどを差すと花瓶のようにもなる。海岸に漂着している流木と合わせて加工すると、おしゃれなインテリアそのものだ。
MITは昨年6月、対馬市から食害生物の有効利用に関する研究を受託し、とげから紫の色素を抽出して染め物にするなど試行錯誤を繰り返してきたが、色素とともに独特の臭みも繊維に付いてしまうなど悪戦苦闘していた。
なかなか打開策が見いだせず、昨年12月、地元でシルバーアクセサリーを制作している小宮さんに協力を打診。小宮さんはガンガゼへの真水噴射と一定濃度の漂白剤つけ置きで色素を落とし、とげを抜くなど約10工程を考案。今年2月、吉野さんとの協議でランプシェードなどに加工することを決めた。
小宮さんは「1個作るのに半日はかかるが、仕上がると、自然の造形美にほれぼれとする。漁師さんが駆除したガンガゼを買い取って作れば、藻場保全と島内経済活性化の両方に役立つだろう」と話している。
問い合わせはMIT(電0920.84.2366)。
〝厄介物〟ガンガゼ 殻がオブジェに変身
2019/07/23 [00:02] 公開