長崎大経済学部が創立120年 片淵キャンパスの歴史的建造物、架空キャラが案内

長崎新聞 2025/03/25 [12:32] 公開

アン・ジーンと巡る長崎大片淵キャンパスツアー

アン・ジーンと巡る長崎大片淵キャンパスツアー

  • アン・ジーンと巡る長崎大片淵キャンパスツアー
  • 長崎大片淵キャンパスの魅力を発信してきた学生7人。後ろの建物は瓊林会館=長崎市、同キャンパス
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長崎大経済学部は前身の長崎高等商業学校(長崎高商)創立から28日で120年を迎える。同学部がある長崎市片淵4丁目の片淵キャンパスには三つの国登録有形文化財(☆マーク)をはじめ、歴史的に貴重な建造物が残る。昨年12月からは、江戸時代の出島から現代にタイムスリップしたオランダ商館長という架空のキャラクター、アン・ジーンを案内役に学生らが交流サイト(SNS)で魅力を紹介。アン・ジーンのガイドでキャンパスを巡った。

 (1)長崎高商の門柱=1905年に東京、神戸に次ぐ全国3番目の高商として開校。「通常4年かけて学ぶ内容を3年で詰め込むため朝から晩まで授業だったそう。門柱はその頃から学生の成長を見守り続ける」

 (2)瓊林(けいりん)会館☆=19年に新築寄贈され、研究館として使われた赤れんが造りの建物。「明治後期から大正初期の近代建築物の多くが解体された長崎市で貴重な歴史資産。未来に残すべき経済学部のシンボルだ」

 (3)中庭=桜や紅葉など四季折々の木々が季節の移り変わりを感じさせる。「この地で学んだ学生らが寄贈した多くの石碑や記念樹によってこの風景がつくられている。地域住民らが足を運び、愛されている」

 (4)東南アジア研究所=東南アジア地域に関する理論的・実証的研究を行う目的で62年に設立。64、65年にあった経済学部移転の反対運動では、その主張を支える存在となった。「現在は教員の研究室として使われており、これからも知の拠点としてあり続ける」

 (5)経済学部倉庫(煉瓦(れんが)倉庫)☆=07年2月完成。創立時の建物群の中で唯一現存する。近代的な「イギリス積み」のれんが壁が特徴。「これまでも、これからも経済学部の歴史を見守る存在となるだろう」

 (6)図書館=経済関連の専門書など約30万冊を所蔵。18世紀に刊行されたアダム・スミスの「国富論」初版本など高商時代の名物教授、武藤長蔵博士が寄贈した貴重な資料も展示する。「学問に励む学生や教員にとって欠かせない場だ」

 (7)拱(こまねき)橋☆=03年に架設。現存する石橋の中でも近代的な設計。「開校当時は学生のげたの音が響き、馬車も往来していたそう。そんな橋を渡る若人たちは今もより良い社会への架け橋となるべく学んでいる」


◎学生7人、キャンパスの魅力発信「未来を考えるきっかけに」

 長崎大経済学部の山口純哉研究室(地域経済学)の3、4年生計7人は昨年からキャンパスツアーや交流サイト(SNS)投稿を通じ、片淵キャンパスの歴史や魅力を発信してきた。学部移転が検討される中、7人は「キャンパスの未来を考えるきっかけになれば」と願う。
 同大は昨年7月、キャンパス再編構想を発表し、経済学部の文教キャンパス移転を検討中。これを知った7人は「学生や地域住民に魅力を知ってもらいたい」と、昨年11月の「経済祭」で7カ所を巡るキャンパスツアーを企画した。準備のため石碑や石柱、記念樹の計約90カ所を洗い出し、4年の黒木案仁さん(22)は「先輩たちの思いが詰まっている」と感じたという。
 瓊林(けいりん)会館は耐震性の問題で通常は内部を公開していないが、同ツアーで特別に1階の談話室と資料室を見学できることに。7人は室内の展示を整理して、エピソードも交えて案内したところ、好評だった。
 昨年12月からはアン・ジーンを案内役にSNSでキャンパスの魅力を連日紹介。創立120年の今月28日で一区切りだが、4月以降も何らかの形で活動を続ける。3年の坂口由芽さん(20)は「魅了発信に加え、このキャンパスがどうあるべきか、地域住民も交えて話し合えるような場をつくれたら」と話す。