新人三つどもえか…五島市長選の告示直前情勢 12年ぶりのリーダー交代へ 長崎

2024/08/22 [11:20] 公開

島の玄関口福江港と市街地。12年ぶりに代わる市のリーダーを決める選挙が間近に迫る=五島市

島の玄関口福江港と市街地。12年ぶりに代わる市のリーダーを決める選挙が間近に迫る=五島市

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任期満了に伴う長崎県五島市長選の告示が25日に迫った。3期目の現職、野口市太郎氏(68)が退任し、元市議の荒尾正登氏(62)、元国会議員秘書の出口太氏(49)、元市議の中西大輔氏(35)=いずれも無所属新人=による三つどもえの争いとなる公算が大きい。12年ぶりに市のリーダーが代わる同市長選の前哨戦を探った。

 深刻な人口減少に直面する五島市。野口市政の12年間で観光振興やUIターン促進など、移住定住対策を進めた結果、転入者が転出者を上回る「社会増」を2019、20、23年に3度達成。好循環が生まれつつある一方、市によると、60年には人口が2万人を割る可能性も指摘され、将来を見据えた持続可能な施策が急務。
 荒尾氏は、議員歴34年のベテラン。元福江青年会議所理事長で地元経済界とのつながりが深く、市議会議長など要職も経験。保守派市議の要として旧福江市を含む歴代4人の市長を支え「いずれは市長に挑戦したかった。チャンスが巡ってきた」と動機を語る。
 地域に根差した実績から70以上の会社や団体などから推薦を受けつつ「草の根」で1人つじ立ちを重ね、地道に浸透を図る。基幹産業の一次産業振興、給食費無償化など子育て支援を重点施策とし「独自カラーを打ち出し、新しい五島市をつくる」と意気込む。
 出口氏は高校進学で五島を離れ、東京大を経て人事院など国家公務員、全国紙記者、参院議員の青山繁晴氏の秘書を経験。26年度末に迫る国境離島新法の期限延長の重要性を強調し、中央で培った知見、人脈を生かし「ふるさと五島を護(まも)る」と意欲を語る。
 長くふるさと五島を離れていた出口氏の最大の課題は知名度不足だ。「世代交代」を掲げる野口市長が後継指名するなど全面支援し、自民党も推薦。組織力を背景に市長、市議らと市内でのイベントや支援者回りで積極的に顔を売り、知名度アップに奔走している。
 千葉県出身で五島に魅了され7年前に移住した中西氏は20年に続き2度目の市長選への挑戦。21年から3年半、市議として活動。地域をくまなく回る中で実情にそぐわない施策、変わらない市政に限界を感じ「市民目線の政治に刷新したい」と出馬を決めた。
 着衣などピンクにこだわるのは「存在を知ってもらい、地盤や知名度がないハンディをカバーするため」。足で稼ぎ、掲げた重要課題は公共交通の充実。立憲民主党の推薦を得て、つじ立ちや、若さを売りに交流サイト(SNS)も駆使し幅広い層にアピールする。
 五島市誕生から8月で20年。三つどもえの選挙は初めてで今回、荒尾氏と出口氏が並び立つことで保守勢力が分裂。「反自民」勢力として割って入る中西氏陣営は「好機」と捉え攻勢をかける。