20、21日に東京・日本武道館で行われる第41回全国高校柔道選手権。長崎県勢は団体の女子に長崎明誠、男子に長崎南山が出場する。チームを率いるのは、それぞれ小森講平(40)、小森将弘(39)の年子の兄弟。父の輝喜(67)、弟の泰洋(35)も高校の指導者という柔道一家の長男と次男が、4年ぶりに一緒に団体の監督として春の大舞台に立つ。
■刺激
長男の講平は長崎南、埼玉大を卒業後、瓊浦などを経て2004年に保健体育教諭として長崎明誠に赴任。翌2005年に生徒が1人入部して、マンツーマンでゼロからチームづくりを始めた。
自らは現役時代、全国的な実績を残していない。だが、逆にそれを強みにした。「結果を出していないから、いろんな所に恥じらいなく飛び込めた」。当時、女子で全国トップレベルだった阿蘇(熊本)など県外にも出向いて「日本一になるためには日本一の指導力が必要」と努力を続けた。
結果、部員3人で臨んだ2006年の県高総体団体で初優勝すると、2008年から現在まで県内主要大会(県高総体、県新人大会、全国選手権県大会)の団体で負けなし。今年も個人全階級で県代表をつかむなど、研究熱心さと行動力でチームを長崎県内の絶対的存在に引き上げた。
その兄に「早く追いつきたい」という次男の将弘は高校時代、団体と個人で県王者に輝き福岡大に進学。卒業後は壱岐、瓊浦で指導して、2014年に母校の長崎南山に着任した。兄とは今も頻繁に酒を飲みながら、互いの批評をしているが「おまえはあそこがだめ、とか兄の講演会になる」。ただ、それが頼もしく、ありがたい。兄からの刺激もあり、今回4年ぶりに全国切符をつかんだ。
■信念
そんな兄弟が目標にしているのが、長崎東などを全国に導いてきた父、輝喜。将弘が「物心ついた時から父というより先生。恐ろしかったけど、自分を犠牲にして生徒に情熱を注げる人」と言えば、当初は男子を教えたかったという講平も「“女子だろうが、公立で教えられることが幸せ”という父の言葉が大きかった」と感謝する。
現在は三男の泰洋が監督の瓊浦で外部コーチを務める輝喜。「信念を持って、やるべきことを貫いてほしい」と息子たちに期待を込め、自らも「競技人口が減る中で底辺拡大をしたい」と熱は冷めない。この春、10人以上の部員を迎える泰洋も「兄たちに負けない」と気合十分だ。
この小森家がまだ持っていないタイトルが団体日本一。講平が率いる長崎明誠は2016年中国インターハイで準優勝しており、もう一歩の位置まで上がってきている。今回も上位に絡める力を備えており、手応えはある。講平は言い続けている。「目標は日本一。選手たちの執念に期待したい」