「最前線」に女性警察官 長崎県警10年で100人増 広がる職域 8年ぶり自動車警ら隊、自主的に逮捕術の訓練

2019/02/05 [16:00] 公開

8年ぶりに自ら隊に配属された女性警察官=長崎市田中町、自動車警ら隊本隊

8年ぶりに自ら隊に配属された女性警察官=長崎市田中町、自動車警ら隊本隊

  • 8年ぶりに自ら隊に配属された女性警察官=長崎市田中町、自動車警ら隊本隊
  • 古家巡査(左)の実技指導を受ける女性警察官たち=長崎市松が枝町、大浦署武道場
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 長崎県警の捜査現場で女性警察官の活躍の場が広がっている。本年度、24時間365日、パトカーで巡回する自動車警ら隊(自ら隊)に8年ぶりに女性を配置。女性同士で逮捕術のスキルを高める取り組みも出てきた。女性を積極採用する流れもあり、事件・事故の「最前線」で女性警察官の存在感はますます高まりそうだ。

 本年度、自ら隊に配属されたのは坪川伸子巡査長(42)ら3人。日々、男性警察官と一緒にパトカーに乗り、職務質問や交通違反の取り締まりのほか、事件や事故が発生すれば現場に急行し、初動捜査に当たる。

 「パトカー=男性」という従来のイメージ通り、現在、県内の女性警察官でパトカー(ミニパトカーは除く)を運転するのは彼女たちだけ。車体が大きく高い運転技術が求められるため、当初は運転が不安だったという坪川巡査長は「努力次第で課題はクリアしていける。女性もできる仕事」と実感を語る。

 県警警務課によると、1月1日現在、女性警察官は240人。10年前から約100人増え、職域も徐々に拡大している。男性並みの体力が求められる機動隊などには配属されていないが、過酷な現場も多いとされる自ら隊への配属で、男女の仕事の境目は、さらになくなってきた。
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 彼女たちを抜てきした背景には、女性が絡む事件・事故の対応を強化する狙いがある。女性が被害者や加害者の場合、男性警察官では身体検査や込み入った事情を聴くことが難しい場合も少なくないのだ。

 20代の女性自ら隊員は、男性との体力の差を認めつつ、女性の「ソフトさ」を武器と捉えている。職務質問の際、「女性だから」と甘く見られることもあるが、そこを逆手に取り、相手の懐にすっと入れることもある。男女平等の考えに縛られず、「女性だから」の部分を磨く必要性も感じているという。

 警務課によると、過去に自ら隊に配属された女性警察官は7人。地域警察を担当する赤瀬幸利首席参事官は、今回の3人の働きぶりを評価しつつ、「機動力が求められる現場で女性が特性を生かして活躍する場面は、さらに増えていくだろう」と先を見据える。
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 「離れない手は逆に利用して、いなして」-。1月下旬、大浦署武道場。昨年11月まで逮捕術の特別訓練員だった同署の古家日花里巡査(22)が、同僚の女性警察官たちに対し弱い力でも、暴れる相手を制圧できる技術を教えていた。

 同署では、昨年7月から月に1回、15人の女性警察官が集まり「術科訓練女性実践塾」を開いている。高まる女性への期待に応えようと、彼女たち自身が考案。柔道などの実技と女性に関するテーマの座学があり、講師は同署の女性警察官が務めている。

 参加する千原有紀子巡査長(24)は「力加減のイメージや感覚も違うので同性からの実技指導は分かりやすい。他部署との情報共有や交流が増える点もありがたい」とメリットを挙げる。同署幹部は「女性警察官が感じている不安を解消し、自信を生むためにも術科などのレベルアップは重要」と話す。