ブォオオオオン、ブブブォオオ-。エンジン音が響(ひび)きわたる大村市の大村湾(わん)サーキット。ここで練習を重ねる清水啓伸(しみずひろのぶ)さん(13)=長崎大付属(ふぞく)中1年=は、レーシングカートの「地方カート選手権(せんしゅけん)FS125東地域(ちいき)」で、2018年のシリーズチャンピオンに輝(かがや)きました。「車の音が好き。将来(しょうらい)は、歴史に残るF1レーサーになりたい」。夢(ゆめ)に向かって一歩一歩、進んでいます。
■ 小3で初レース 結果は最下位
モータースポーツ観戦が大好きな父親の啓宗(ひろむね)さん(40)の影響(えいきょう)で、競技(きょうぎ)を始めました。初レースは、小学3年の夏。小学2年から6年までの10人が出場したクラスで、結果は最下位でした。ただ、当時は「自分から進んでではなくて『やらされている』という感じだった」という啓伸さん。最下位でも「まぁ、いいか」と、あまりくやしくなかったそうです。
練習に足を運び、少しずつ速くなっていくと、次第に「勝ちたい」と気持ちが変化。教わった通り、ブレーキのタイミングやコーナーの曲がり方などに気をつけると、タイムがぐっとちぢまっていきました。翌年(よくとし)の5月、九州大会で3位入賞。初めての表彰(ひょうしょう)台に「うれしくて、車のことがもっと好きになった」と振(ふ)り返ります。その後も、県外遠征(えんせい)を重ねながら、着実に力をつけていきました。
■ 「つかれた」と言わない
指導(しどう)している大村湾サーキットの中嶋洋己(なかじまようき)さん(36)が「練習中に弱音をはかない。『きつい』とか『つかれた』とか言わない」と話す通り、集中して練習に取り組んでいる啓伸さん。2018年から日本自動車連盟(れんめい)(JAF)の「日本カート選手権」に参戦しています。このうち地方選手権は東地域と西地域に分かれていて、啓伸さんは、より出場選手が多い東地域にチャレンジ。複数(ふくすう)のレース成績(せいせき)で年間優勝(ゆうしょう)者となりました。
その年、長崎発祥(はっしょう)の「リンガーハット」がスポンサーに決定。同じくリンガーハットに所属(しょぞく)している体操(たいそう)の内村航平(うちむらこうへい)選手が年末に来崎した時、一緒(いっしょ)に写真を撮(と)らせてもらいました。「ドキドキした。いつか内村選手のように、世界で活躍(かつやく)したい」
好きな言葉は「人事を尽(つ)くして天命を待つ」。今季は、地方選手権の上の階級の「全日本選手権」に挑(いど)みます。「体力面も精神(せいしん)面もしっかりトレーニングし、全レースで勝ちたい」と意気込(ご)んでいます。