「祐」という字は「ユウ」「たすけ」と読むが、例えば桑田佳祐さんの名前は「けいすけ」で、祐は名前だと「すけ」と読まれる。このように人名に当てた時の訓読みを「名乗り訓」というらしい▲漢和辞典を開けば「祐」にはほかに「さち、たすく、まさ、ます、むら」という名乗り訓がある。源頼朝の「朝(とも)」はその名が付けられた時代には新しい読み方だったという▲辞書に載るくらいだから、名乗り訓にはかねて、おおまかな決まりや“相場”があるはずだが、昨今は辞書的な読み方を超えた名前も多くある。さて、戸籍ではどこまで認められるだろう▲5月26日から戸籍の氏名に読み仮名が記される。それを前に、届け出があった読み方を認めるかどうか、法務省はその指針を発表した。桜良を「さら」、「飛鳥」を「あすか」と読むのはOKという▲漢字の読みの一部が入っていたり、明日を「あす」と読むような「熟字訓」だったりすれば広く認める。名乗り訓の文化をギリギリの線で守りたい、と指針は語っているようでもある▲〈太郎とは男のよき名柏餅(かしわもち)〉長谷川櫂(かい)。太郎を「ジョージ」と読むのは漢字との関連がなくNGらしい。これが認められては本人がさんざん苦労するに違いない。不利益を被らず、人に親しまれてこその「よき名」だろう。(徹)
名乗り訓の文化
長崎新聞 2025/02/20 [09:45] 公開