五島うどんの製麺所などがDX最優秀 経産省表彰、肌感覚の乾燥工程を可視化 長崎

2025/01/19 [11:00] 公開

IoTを活用した空調を確認する(左から)横尾氏、浜崎社長、祥一郎氏

IoTを活用した空調を確認する(左から)横尾氏、浜崎社長、祥一郎氏

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経済産業省の制度に基づく「DX(デジタルトランスフォーメーション)認定事業者」と支援したITコーディネーター(ITC)をたたえる2024年表彰で、浜崎製麺所(新上五島町)と十八親和銀行(長崎市)デジタル化推進部主任調査役の横尾真樹(まさき)氏(38)が最優秀賞を獲得した。職人の勘に頼る五島手延べうどんの乾燥工程を可視化。作業負担を軽減し、技術伝承につなげた。

 DX認定事業者数は同年10月時点で1205。同製麺所は同年7月、県内4例目として認定された。同表彰はNPO法人ITコーディネータ協会(東京)が毎年開催。同年は応募事例の中から全国230人のITCによる投票で決定した。

 同製麺所がDX化したのは、品質を大きく左右する乾燥工程。天候や風向きによって工場の除湿器や換気扇の使い方、窓の開閉具合を変える。浜崎祥雄(やすお)社長(37)の父で先代の祥一郎氏(69)が経験と勘を頼りに、昼夜問わず2~3時間おきに麺の状態を目視確認しながら、手動で室温や湿度を調整してきた。

 この作業負担を軽減するとともに熟練技術を伝承するため、長崎市のITベンダーと協業してIoT(モノのインターネット)を活用。タブレット端末やカメラで、自宅にいながら室温湿度をチェックし空調を操作可能にした。湿度調整は自動化し、夜間の目視作業を減らせた。室温湿度の変化をグラフで表示し分析。浜崎社長は「父の肌感覚がデータとして残り、私の目指すところが見えるようになった」という。

 安価なカメラなどで投資コストを抑え、県の補助金も活用した。浜崎社長は「課題を解決できない中、横尾さんの『第三者の視点』のおかげで『そんなことができるのか』と気付けた」と“変革”を実感していた。

 上五島特産ブランドを守るため、人口減少による人手不足に直面する同業者への横展開も視野に入れる。横尾氏は「今後も労務管理のシステム化など伴走支援を続けたい」としている。