五島市地域おこし協力隊 西田さんが商店開設 古民家を改装、「寺子屋」活用も 長崎

2024/12/23 [12:20] 公開

古民家を改装して開設した「西田商店」=五島市小泊町

古民家を改装して開設した「西田商店」=五島市小泊町

  • 古民家を改装して開設した「西田商店」=五島市小泊町
  • 西田さんとおしゃべりを楽しみながら、宿題に取り組む子どもたち=西田商店
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人口減少や高齢化による地域活力の低下に対応しようと、長崎県五島市が交流拠点づくりを進めている。第1弾として、今年4月に市の地域おこし協力隊として着任した埼玉県出身の西田双太さん(45)が、大浜地区に食品などの販売や子どもたちの居場所となる「西田商店」を開設した。共助の精神を大切に地域活性化を図るモデルケースとして市も注目している。
 「ニッシー、これ教えて」。小学生たちが親しみを込めて「ニッシー」と呼ぶ西田さんに宿題を教わる。商店が1軒もなかった同地区で、西田さんが築90年以上の古民家を住居を兼ねて借りた「西田商店」。毎日午後4時半から6時までの運営だが、月曜日は「寺子屋」としても開放。子どもたちは宿題を片付けるとここで駄菓子を買い、店番ごっこを楽しむ。遊びと学びが融合した温かな居場所となっている。
 全国で活用されている同協力隊制度は、自治体の募集に応じて人口減や高齢化が進む地方に移り住み、地域資源を活用した物産振興など地域活性化を担う仕組み。国内の有人離島情報に特化した離島経済新聞社(東京)の編集者だった西田さんは、今年2月の五島つばきマラソンに参加し、島民の温かい応援やおもてなしに心を動かされ移住を決意。市が地域住民の交流促進や拠点づくりを目的に公募していた同協力隊に応募し、採用された。
 市によると、大浜地区は11月末現在、371世帯630人。高齢化率は54・6%と市全体の42・74%を上回る。最寄りのスーパーは地区中心部から約7キロ離れた福江地区。「移動スーパー」も来るが、その時間に利用できない人もいる。
 西田さんが住民にアンケートをした結果、独居老人の増加、世代間交流の希薄化、共働き家庭の小学生の居場所不足といった課題が浮かび上がった。地域に欠けている「商店」を中心に、新たな交流拠点を目指したのが西田商店だ。市も任期中は拠点の家賃を補助するなどサポートしている。
 西田さんは通常は市地域協働課で勤務。仕入れは昼休みを利用し、レトルト食品やカップ麺、市指定のごみ袋など子どもたちや住民のニーズを踏まえた品ぞろえを心がける。保護者の一人、餌網代由佳さんは「子どもが安心して過ごせる場所。勉強を見てもらえて助かるし、駄菓子を買う懐かしい体験もできる」と歓迎する。
 一方で、寺子屋の頻度を増やしてほしいという要望や営業時間の延長を望む声も。現在は1人で運営をやりくりしているため、ニーズに応えるのは難しい状況だが、「仲間づくりを進めながら、地域ニーズに応え、活性化につながる機能を拡充していきたい」考えだ。得意なものづくりの技能を生かし、魚の皮など地域素材を使った観光客向けの体験工房開設も視野に入れている。
 同課の竹森祐輔主査は「西田商店の事例を参考にしながら、地域住民の声を反映させた持続可能な拠点を増やしていきたい」と話す。